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竜を継ぐ者(16)妹の様子がおかしいのだが



 立ち昇る湯気のような靄のようなもの。
 それは黒く禍々しい色をしていた。
 腹部に当てた手を通じて視えるその靄は、俗に言う瘴気と呼ばれるモノではないのだろうか。
 真吾の心に動揺が走る――事実だと言う事は、僕は……。

「お兄……何かあった?」
「うん……」

 訝しげに尋ねる美里に、真吾はすぐに答えられなかった。
 どうしてこのような事になったのかと言えば、美里を介抱してやっていたのが原因だった。
 いつもは元気印の美里が、家に帰ると珍しく体調を崩して寝込んでいた。晩御飯の終了後には美土里もダウン――父の滝川真二が仕事から帰るまで、寝室で横になると寝込んでしまった。二人ともダウンて……風邪でも蔓延してるのか?
 真吾は晩御飯をスルーした美里の為に、杏仁豆腐を部屋まで運んでやった。
 美里の状態は悪かった。酷い発熱と発汗でパジャマが汗びっしょり……着替えさせた方が良いなと真吾は判断した。
 美里は自分で着替えるのも困難なほど衰弱していた。
 美土里も起きられないし、真二もまだ帰らないし、真吾以外に手の空いた家族がいないのだから本当に仕方ない。悪化したのは真吾が放って置いたからだと後で恨まれても困る――真吾は美里の着替えを手伝ってやる事にした。
 生返事とはいえ美里から了解は得られたから、これで安心して手伝える。兄が相手でも素肌を見られたく無いらしい年頃らしい羞恥心が、今朝の事で美里にも芽生えていたのを知ったので、流石の真吾も無断で剥くのは気が咎めた。
 不承不承なのだろうが、それだけ状態が差し迫っているという事なのだろう。きっと美里は猫の手でも兄の手でも借りたいくらい、ベタベタな身体と湿ったパジャマが気色悪いのだと思う。
 妹の身体に何か思う事など無いと真吾も思っていた。状況が状況だし、それどころでも無いとも思っていた。
 しかし脱がせる段階になった辺りから――変な空気が漂い始めてきた。
 妹の様子がおかしいのだが。
 指が肌を掠めただけで、ドキッとするような声を出すのだ。
 部屋は薄暗さも手伝って、インモラルな空気が漂い始めていた。いや……美里は意識して無いのだから、その気になっているのは自分だけだ。
 そんな空気の中で、苦悩しながら妹のパジャマの上着を脱がせていくと、見るつもりの全く無かったモノが目に入ってしまった。
 上着を脱がせた重力に導かれて、目の前で妹の乳房がプルッと揺れた。小さくも大きくも無い、普通サイズの脹らみ――当たり前だ。最後に見たのは、美里が小学校3年くらいの頃。あれから5年は経ってるのだから、当時はツルペタで起伏も感じられなかった妹の身体も、女性らしく立派に成長してても何らおかしい事は無い……頭で理解していても、真吾は動揺する心を抑えられなかった。
 目のやり場に困る……。
 赤く染まり始めた苺のような、未熟な甘酸っぱさを思わせる妹の裸体。玉のような汗がポツポツと浮かぶ瑞々しい素肌は、少女らしい健康的なエロスを醸し出しており、とても直視できないいやらしさがあった。
 頂点で揺れる蕾は、まるで自らの存在を真吾に主張するかのように天に向かってツンと尖っていた。感じているのかもと意識すると、否が応にも美里の全てがいやらしく見えてしまう。
 身体を拭いてやりながら、いつの間にか指は、脹らみかけた乳首を擦っていた。
 まるで欲望を覆い隠すようにタオルに自分の指を隠し、真吾は乳頭の尖端に指で撫でるように触れる。コリコリとした硬度のある手ごたえと共に、指の腹に乳頭の凸凹を生々しく伝える、勃起乳首の感触。ふにっとしているのに芯のある乳頭の窪みは、指の腹にまるで吸いつくようだ。
 兄の愛撫を受ける妹の、忍ぶような喘ぎ……苺のアイスクリームのように甘酸っぱく、少し幼さが残るような美里のエッチな声。もうそれだけで真吾は堪らない気分になっていた――おかしいのは美里でなく僕だ。
 真吾の心に、昨日覚えたばかりのセックスの興奮が蘇る。
 女の子の不思議と甘い香り、おっぱいの夢のような柔らかさ、マンコの堪らない感触と|膣《なか》出しの舞い上がるような快美感――。
 心にどす黒い感情が沸き起こった――押し倒したい。
 美里をこのまま押し倒してしまおうか……?

「お兄……?」

 妹の声でハッと我に返った。
 美里を見ると、だいぶ怪訝な顔でこちらを見上げていた。
 それはそうだろう……タオルで身体を撫でているなら兎も角、指で撫で回しているのだから怪しまれて当然だ。
 危ないところだったと真吾は胸を撫で下ろす。美里が声を掛けてくれなければ、取り返しのつかない事をしでかす所だった。

「ごめん、何でも無いよ……」

 真吾はバツが悪そうに引き攣った笑みを浮かべると、美里の背中に視線を落とした。
 自分もおかしいのはわかってるが、そうでは無く――美里のこの様子は、矢張りおかしくは無いだろうか。
 美里の今の状態が、あの時の彩夏に酷似しているように真吾には感じられた。
 彩夏はこう言ってなかっただろうか。状態としては身体がだるくて熱く、発汗も酷くなり――と。まさに美里の今の状態ではないのか?
 確か――僕には|堕児《おとしご》を知覚できる力があると夢で言っていたよな。夢が真実なのか、これで判明するのではないか。
 真吾は美里の下腹部に手のひらを当てた。

「――――っ!?」

 湯気のようにもわっと……黒い靄のようなものが湧き立ち、真吾は目を瞠った。
 何だ……この靄みたいなものは。まるで失敗した料理の悪臭表現のように体内から湧き立つ黒い靄。滲み出るに黒い色が禍々しい。物語なんかでは確か、こういうの瘴気って言うんじゃ――。

「お兄……何かあった?」

 行動があまりに不審だからか、美里が訝しげに尋ねてくる。
 しかし難しそうな顔をしている真吾に、美里は首を捻った。

「うん……」

 すぐに答えてあげる事ができない……真吾はそれに生返事で答えた。
 恐らく、この黒い靄が堕児に巣食われている証拠……。
 美里の子宮は堕児に巣食われている為、きっと陰の気が強いのだ。自分の能力が黒い靄として、その陰の気を具現させているのではないだろうか。
 あの夢は真実……という事なのか。そうなると、夢で告げられた他の言葉も、現実だという事になる。
 そう――真吾が堕児を唯一、殺す事のできる能力者だという話だ。
 という事は、美里をこの手で……。
 堕児に寄生されていると知った以上、放っておく事はできなくなった。だが堕胎させるという事は、美里を犯すという事だ。
 さっきは衝動的に押し倒そうとした癖に、いざそれを迫られると躊躇する――だが衝動的にやらかすのと、差し迫られて襲うのでは大きく違う。
 迫られて襲うという事は、罪を理解した上で手を掛けるという意味だ。美里は真吾にとって躊躇を覚える人間の一人であり、迷うのが当然な存在なのだから。
 妹を相手にセックスか――流石に気が引ける……。

「美里はこの黒い湯気みたいなものは、視えてる?」
「うーん……何だろ、黒っぽいのが何か、視えるような……何なの?」

 ちゃんと視えてるのか本当に。
 疑いたくなるような、適当さを感じる素振りで答える美里。

「本当に視えてる?」

 もう一度聞くと、美里は戸惑いながら頷いた。

「何となく……かな。黒いモヤモヤしたのが……ねえ、いったい何なの?」

 何なのと怪訝そうに問う美里に何も答えずに、真吾は起されたままの美里の身体をベッドに横たえた。

「お兄、あの……パジャマは……?」

 剥き出しの乳房を、恥らいに頬を染めて手で覆い隠す美里。胸に触れた事で僅かながらに意識でもしたか、女の子らしい恥じらいの姿を見せる可愛い妹に、真吾は内心ドキリとさせられた。
 その感情をおくびにも出さずに、真吾はベッドに平然と上がり込んだ。

「えっ……お兄ちょっと、何で……!?」

 ベッドの奥側に横たわる真吾を、美里は目を丸くして凝視する。
 それだけでも驚きなのに、今度は服を脱ぎ始めた。
 無言のままベッドで脱衣を始める兄の異常としか取れない行動を、妹は絶句して見守る。もう何を言えばいいのかわからないという、動揺と焦りに縁取られた美里の表情を真吾は無視した。
 全てを脱ぎ終えた真吾を直視できない美里は、真吾に背を向ける――背後を向いた美里の細い背中を、そっと後ろから真吾は抱きしめた。
 兄の暖かい剥き出しの胸板が背中に当たり、美里の肩がビクリと小さく跳ねる。

「え?……ええ~!?お、お兄……何して……」

 もう何が何だかわからない――突然の抱擁に美里は慌てふためいた。顔は火を噴いたように熱くなり、頭は酷く混乱する。美里は何が起きているのか理解できずに、頭は空っぽになった。

「な……何、どういう事、何やって……るの……?」

 慌てた声はどんどん尻すぼみに小さくなっていき、やがて困り果てたような弱々しい響きになっていく。
 別に困らせようと黙っている訳ではなく、真吾も決心がつかないのだ。
 今まで築き上げてきた信頼関係を壊してしまうかもしれない恐怖。
 兄妹としての親愛を失ってしまうかもしれない事への不安。
 血の繋がった妹を犯すのだから、怖気づきもする。美里は確かにブラコンで、少なからず好意を持ってくれているだろう事は真吾も理解してる。
 だがそれは、兄に向ける好意でそれ以外ではないはずだから。
 しかし悠長な事を言ってられないのも事実だった。
 美里を助けられるのは自分だけだという話だし、アレを放って置けばどうなるかなど、真吾もそれは知らない。
 確実に理解できるのは、美里の自我も彩夏と同じように消えるのではないかという事だ。
 自分が彩夏を襲ったように、美里もそうなれば誰かに襲われるかもしれない。そうなる可能性をわかっていて、兄としては放って置くなどできやしない。
 美里は犯される事を怒るかも――いや、きっと怒る。それとも泣くかな……。
 まだこれが他人なら放っておく手段も取れたのに、運命は遁逃を許してくれない。窮愁の身の上が真吾を責め苛むように切なくさせた。
 それでも真吾は美里を助けたい。例えそれが、自分の手を汚す行為であっても。
 たった一人の、大切な妹だから。

「美里……」

 美里はビクンとすると、居心地が悪そうに俯いた。
 困惑と不安の入り混じる美里の双眸に胸の疼くような痛みを感じて、真吾はその痛みを別の感覚へと変換させるしか逃れる手段が無かった。
 肌に伝わる妹の熱とその感触――女の子特有の柔らかな触り心地や甘やかな芳香に意識を傾け、真吾は痛みを興奮へと塗り替えていった。

「ごめんね美里。おまえを助けるよ……」
「何……どうしたのお兄――あっ!!」

 骨ばった手が美里の可憐な脹らみを包み込んだ。
 驚いたように真吾を仰ぎ見る美里――その目を無視して、真吾の手は柔らかな脹らみを揉みしだきながら円を描く。

「ちょっと待って、お兄……何してるかわかって――あふ……ああっ!」
「わかってる……ごめんな。でも美里を助ける為にはこうするしか……」

 指で挟んでコリッと蕾を摘んでやると、美里はビクリと背中を緊張させた。
 そのまま指先で丁寧に窪みをクリクリと撫でてやる。

「あっ……ああっ!い、意味がわからないよ……こんなのおかし……ッ」
「こうされると美里は気持ち良いんだろ?今は身体がエッチな状態だから、感じて当然だけどさ……」

 猶も乳頭を指でコリコリと揉みながら、耳元で静かに囁く真吾。美里は脳にピリピリと痺れるような快感を与えられながら、それを懸命に拒むように呟く。

「何言ってるのかわかんな――あふ!!やめて……お兄、ああん!」
「おまえの身体には堕児っていう生物が寄生してる。この敏感になってる身体はその所為だ……さっき黒い靄を視たろ?あれが寄生されてる証拠だよ」

 右腕を美里の首の下から出して抱きしめつつ、もう片方の手を指を這わせながら下半身へ持っていく。パジャマのパンツに指先が触れると、美里は訝しげな声で尋ねた。

「ふあ――何する……気?」

 無言で真吾は、ショーツをパンツごと一気に剥ぎ取った。
 美里はもがいた。だが重い身体がいう事を聞いてくれないのか、その抵抗も脚を僅かにバタつかせただけに終わる。
 美里の左脚を持ち上げると、閉じれないように脚に引っ掛けた。
 股開きの恥ずかしい格好にされた美里の頬が、カーッと赤面する。

「や……やだ、こんな格好……」

 恥ずかしさ極まった眦が涙を浮かべる。
 相手は色艶などまだ無縁そうな15歳の妹だというのに、こんな気分にさせられるなんて。廉恥に染めた頬が艶めく顔に、不覚にも真吾は色気を感じて焦る――だが今はその方が良いのか。
 劣情に溺れている方がまだ、勢いだけで美里を犯せる……。

「――ふう……!あ……あんっ!」

 指を蜘蛛のように這わせてやると、美里はその感触に艶めかしい声で応えた。
 秘所に到達すると、真吾の指が撫でるように薄めの茂みを通り過ぎて、割れ目を掻き分けその内部に潜り込んだ。ヌルリとした秘裂は、指を滑らせてやっただけでクチュクチュと猥らに音を立てる。

「凄く濡れてるね、美里。ココ、辛いんだろ……?」

 内部は愛蜜でドロドロだった。
 スリットで指を抽挿させていると、ぷっくりとした突起を感じた。

「凄く勃起してるね。こんな状態で、クリトリス良く弄らなかったな」
「あん!い……嫌、変なトコ触らないで!何の話なのか理解できないよ……お兄、変だよ。ああっ!」

 淫核はかなり大きく肥大して、痛々しい程だった。
 腫れた突起を指の腹がスリスリと優しく撫でると、細い括れがビクビクと戦慄いた。指を3本使ってクリトリスを包み込むようにしながらとっくり擦ってやる。
 美里は拒みながらも悦楽の声を上げた。だがその雰囲気に、真吾は何か引っ掛かるものを感じる――。

「ああっ!あっあっ……お兄、何してるの。何でそんなトコ触るの、変になる……怖いよ。やだぁ……あふっあっあっ!」

 感じた引っ掛かりを、真吾は何となく理解できたような気がした。
 変な場所を真吾に触られているからというよりも、どうしてソコを触るのかというようにも受け取れる美里の態度――美里はオナニー経験が無いのではないか。
 クリトリスという単語も知らない雰囲気だし、弄った経験も無さそうだし……美里は性的な知識が乏しいように見受けられた。

「美里はオナニーした事ないの?」
「オナ……?知らない、止めてお兄……!」
「じゃあ……クリトリスって何かわかる?」
「知らない!もう、変になるから、やめて……あんっ!ああぁっ!」

 本当に知らない……今時こんな女子がいるとは驚きだ。
 処女というだけでなく、絶頂そのものがはじめて……何もかもがはじめてとは今時そんな女の子、子供にしか有り得ない。何にも染まっていない乙女の肉体に、自分自身で快楽の味を教え込める経験なんてそうはない。それを知覚すると真吾の興奮は昂ぶりを感じた。
 先ほど芽生えたどす黒い感情が真吾の心に再び擡げる――助ける為には仕方ないと思っていたのに、今は違う。押し倒そうとした瞬間に感じたモノと同じ事を思ってる。
 美里の|膣《なか》に挿れたい。この感情は劣情だ……。

「美里はココでイクのはじめてなんだね。僕が教えてあげる、気持ち良い事……」
「お……お兄ぃ、や……やあ……ッ」
「僕が美里に教えてやる。女の身体の悦び、僕が教えてやるよ……」

 耳元で囁いてやると、息の荒さがこそばゆいのか美里は少し身悶えた。
 淫核をズルズルと上下に擦ると、指から蜜の捏ねられる淫靡な音が上がった。

「ちょっと、お兄――ああっ!やめてってば、お兄……あ~ん、あっあっあっあっ……ふあああ~っ!!」

 一際高くなっていく美里の喘ぎ声に真吾はギクリと肝を冷やす。声を聞き咎められて様子でも見に来られたら大変だし、バレてもマズい。
 妹を犯そうとしているのだ。助ける為とはいえ、後ろめたい行為を家族に知られるのは困る――可哀想だけど仕方が無いよな……。
 
「ちょっと声が大きいよ。ごめん――な……」

 真吾は手のひらで、後ろから美里の口を塞いだ。
 口を塞ぐという兄の少し乱暴な行為に目を見開く美里。いつもは優しい兄がこんな事をするなんて……驚きに打たれたような顔に真吾も心が僅かながら咎めた。
 なのにゾクゾクしてしまう――。
 妹が相手というだけでも背徳的なのに、後ろから羽交い絞めるように口を塞ぎながらの性行為なんて、まるでレ●プだ。妹を相手に強い劣情を感じてしまっているのに、倒錯的な状況に興奮を一気に昂ぶらせて……これではまるでレ●プ願望があるみたいじゃないか。

「んんう!んんん……んっんっんっ!」

 淫核を撫でる指に力が込められる。
 愛蜜で溢れた秘裂はぐちゅりと淫猥な音を立てた。
 指を割れ目に沿って上下に動かしながら摩擦を深めてやると、美里はビクリビクリと細い身体を弓のように撓らせいた。
 手のひらに妹の悦楽の声が洩らされ、そのくぐもった喘ぎが耳に届くと、心にドロドロとした澱のようなものが流れ込んで、真吾は堪らない昂ぶりに包まれた。

「美里……そろそろイきそうだね。イかせてやるよ……美里」

 中指がクリトリスの根元をグイッと持ち上げるように撫でると、美里の腰が大きく激しくビクビクビクッと揺れた。

「うう―――ッ!!うんっうんっうんっうんっ!!ううう~~~んんん―――――!!」

 手のひらにくぐもった激しいイキ声を洩らして、美里は絶頂した。
 声を強制的に抑えられての絶頂にゾクゾクとする。
 羽交い絞められながら逝かされる妹の姿に、ヤバいくらいに興奮を感じてしまう。最低だ……真吾は、そんな自分に煩悶する。
 レ●プ願望が少なからず自分にもあるのだ。背徳的な行為を強いられながらも、昇り昂ぶる無垢な妹の姿に、激甚な劣情を感じてしまう。
 真吾は相反する感情に罪悪感を覚えながらも、それを自覚し始めていた。

小説家になろう・ノクターンノベルズでも連載中です◇










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2018/07/26 00:00 | 竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

竜を継ぐ者(15)いつもと違う朝の日常②



 上履きに履き替える為に通りかかった玄関先で、一冊のスケッチブックが真吾の足元に落ちた。すぐにそれに気づいて拾う――パステルホワイトの表紙に小さく〝大崎美奈《おおさきみな》〟という名前。
 クラスメイトの女の子に、確かそんな子がいたはずだ。
 周囲にあまり興味を持たない真吾は、クラスメイトの細かい風体までは記憶はしていない。ただ名前と特徴を簡単に覚えている程度だ。
 美奈についても休み時間になるとスケッチブックに鉛筆を走らせている、物静かで暗そうな子だったようなという、曖昧な記憶しか持ち合わせていなかった。
 真吾が顔を上げると、そこには本人の大崎美奈が俯き加減で立っていた。
 細く華奢な体躯に、艶めいた黒髪を腰の辺りまで伸ばした小さな子。千佳も小柄だが、美奈はもっと小さい。顔が真吾の胸の辺りにきそうな程に小柄だ。
 尤も胸元は、千佳よりも発育はそこはかとなく進んでるように見えるなと真吾は思った。思わず目が先に胸元を捕らえたのは、思春期男子の性というやつだ。
 美奈の風体で真吾は「ああ」と納得した。目の下まで伸ばされた前髪の所為で、暗いイメージを懐いていたのかと。
 それにしても表情がさっぱり見えない。口元も手が軽く添えられてしまっているので、表情すら捉えられないが、美奈が恥ずかしそうにしているのは赤らめた頬で辛うじて理解できる。
 真吾はその様子から、自分よりも更に輪を掛けて内向的そうなものを感じた。スケッチブックを拾い上げてから既に、1分近くが経とうとしているのに美奈から話し掛けてきそうな雰囲気がまるでない。
 彼女の挙動を待っていたら、授業が始まりそうだ。

「あの……落としたよね、大崎さん」

 スケッチブックを美奈に差し出しながら、真吾は声を掛けた。
 心ならずも頬が熱くなってきてしまう。
 彩夏個人には慣れたけど、矢張り女性に慣れた訳じゃないんだなと真吾は実感させられた。こうなるから女の子に話し掛けるのは苦手なのだ。
 美奈はスケッチブックをおずおずと受け取りながら、蚊の鳴くような細い声で答えた。

「あ……ありがと……う」
「どういたしまして」

 更に真っ赤になる美奈に、真吾は気合で赤面を止めながら軽く微笑んだ。
 何とも儚げな感じの女の子だ。姿は少し変わっているが、頼りなくて可愛い雰囲気の子だなと真吾は思った。
 お見合い状態の解けてない真吾に、千佳の横槍が入る。

「真ちゃんいつまでボサッと突っ立ってんのさ!早く履き替えなよ」

 声の方へ顔を向けると、どこかイラついた雰囲気の千佳が立っていた。
 さっきまで機嫌は悪く無かったはずなのに、知らないうちに機嫌が悪くなっているのは、この年頃の女子には良くある事なようだ。
 千佳も例外では無いのかと思うと、真吾は気鬱な気分になった。

「ボサッととは何だよ。別に待ってなくても――先に行けば良いだろ」
「置いてったって後で怒られたくないもんねー」

 そう言って千佳は「べー」と舌を出した。
 別に怒らねーよ……幼稚な膨れっ面の千佳に嘆息しつつ、真吾は靴を脱ぎ始める――不図、横を見ると未だ動けずにいる美奈に気がついた。
 立ち尽くすような姿の美奈が、真吾は困っているように見えた。会話途中で横槍が入ると、立ち去って良いのか迷う事がある。美奈の困惑した雰囲気は、まさにそんな感じ。
 特に会話をしていた訳でも無いので、自由に立ち去ってくれて構わなかったのだが……美奈は、そういった事がとても苦手な子なのだろう。
 ここは自分が気を利かせてやるべきなのだろうなと、真吾は思った。

「じゃーね、大崎さん。同じクラスなのに朝にじゃあも変だけど」

 急に自分の方へ向いた真吾の笑顔に、美奈は焦ったように真っ赤になった。
 急いでコクコクと首を振る美奈に、漫画やアニメだったら、彼女の頭の上に飛び散る汗かなんかが描かれてそうだなと思って、真吾は少しおかしくなった。
 本当に自分以上に内気で恥ずかしがり屋さんだ。真吾は彼女と自分が喋ったら会話にならなそうだなと思った。
 彼女との接点なんて、お互いに〝絵を描くのが好き〟程度で他に何もない。美奈は美術部だが、真吾は帰宅部。クラスでも席は遠いし、同じクラスになってから会話をした事も一度もない。
 ここまで接点がない相手と接する機会などそうはないから、気にする事もないよな――と考えていると、今度は千佳に首根っこを摘まれた。
 振り向くと機嫌が更に悪化している千佳の顔があった。

「いつまでボクを待たせるつもりなんだよッ」
「先に行けばって言っただろー?何なんだよ今朝はやけに突っかかるな」
「真ちゃんこそ朝っぱらから鼻の下伸ばして、やらしーんだよッ」
「は!?スケッチブック拾ってあげただけだぞ、意味わかんねぇ……」

 千佳との言い合いを美奈に見送られながら、2年の教室のあるA塔の3階へ口論(?)を続けながら真吾は向かった。
 朝から何だか疲れたな……と、真吾は心で溜息をつく。
 別々のクラスである千佳と別れると、真吾は2年B組の教室に入って行った。

 ◇

 珍しく座席に着くなり早々に香椎宏文《かしいひろふみ》が声を掛けてきた。
 宏文はゲームを通じて仲良くなった、所謂ゲームフレからのリアルフレンドというやつである。2年のクラス替えで、同じゲームをしているという事柄からゲームフレンド付き合いが始まった宏文との関係だが、今では普通にクラスの友人として付き合いがそれなりに深まっている。
 宏文は真吾のようなゲーマーでもオタクでもないが、そういった趣味の人間に偏見で分け隔てしない。
 明るくひょうきんで人懐こいので、誰とも仲良くなるタイプの宏文は、人目を強く引くタイプではないが、茶髪に染めていてもチャラく見えない爽やかな雰囲気の持ち主だ。
 雰囲気が良いので、人知れず思っている女子がいても不思議に感じない。
 そんな宏文だから、真吾もすぐに打ち解ける事ができた。
 宏文がいなければ、真吾はクラスで浮いた存在になっていた可能性は否定できない。実際に宏文以外の男子とは、未だ上手く付き合えないでいる。
 それに慣れた頃には、クラス替えがまたやってくるのだろう。一人の時間が多かった真吾には、交流にそこまで必死になれない冷めた部分も持っていた。
 真吾にとっては何年も繰り返されているルーチンワーク、既に慣れた。
 一人を寂しいと感じたのはもう随分と昔だ。慣れてしまえば大した問題にも感じなくなっていたし、それはそれで構わないとも真吾は思う。

「真吾おはよ~、イベントどこまで進んでる?」

 宏文は昨日配信されたばかりのイベントの話題を真吾に振ってきた。
 昨日の今日ではそんなに進むはずもない――それ以上に昨日は慌しすぎて、スマートフォンを弄る暇が殆どなかった。
 いつもの真吾であったら有るまじき事柄だが、今回のイベントは100位以内どころか1000位圏内も怪しいかもと感じていた。

「昨日忙しくて――まだあまり進んでないんだ」
「え~、いつもランカーじゃん?」
「忙しい時なんてランキング入りは無理だよ。テストの時とかね?」

 なんていう何気ない話題で、朝の空き時間は過ぎていく。
 隣の席の結城愛が何か取りに着たのか、友人たちからいったん離れて席に戻ってくる。それに気が付いた宏文は、愛に声を掛けていた。
 人に物怖じしない彼を、真吾は心底羨ましいなと思う。

「おはよ~結城さん」
「はよー、香椎くん――と、滝川くん」

 一緒にいる為に気を使ってくれたのか、愛は真吾にも挨拶をくれた。
 流石に名前を出されたので返さない訳にもいかない。

「――お……おはよう」

 真吾は挨拶を返しながら、恥ずかしさで一杯になっていた。普段でも愛に対してまともに接する事はできない真吾だが、今日は輪を掛けて接しづらい。
 挨拶を返すと後ろめたさで、つい俯き加減になってしまう。
 火照そうになる頬を見られたくない――。
 意識するなと言う方が難しい。
 というのも勿論、何もかも今朝の夢の所為だ。
 普通の夢なら良かった。愛を相手にあんないやらしい夢を見てしまうなんて。
 彼女の声や姿を見ると、否が応にも脳裏に生々しくリフレインしてしまう――感じる顔、腕に抱かれて喘ぐ声……膣《なか》に射してと強請るスケベな愛の姿を。
 うッ、マズい――股間が……。

「どったの真吾」

 俯いていると不信に感じたのか、宏文が不思議そうに声を掛けてきた。

「い――いや……何でもない」
「ああ、結城さんと話せたから緊張してんの?」
「え?あ……ああ。うん、まあね……」

 別の方向に曲解してくれた宏文に、真吾は内心ホッとした。
 どうしたのと尋ねられても、とても答えられる内容じゃない……。

「可愛いよなぁ、結城さん」

 そう言う宏文の鼻の下も、相当に伸びていた。
 ははーんと真吾は思った。
 イベントが始まって次の日に進み具合なんて聞いてくるからおかしいと思った。

「あ、ヒロおまえ……また僕をダシに使ったね?」
「ふふん、バレた~?」

 こうやって真吾の所に宏文が来る理由の一つに、隣の席の愛の存在がある。愛と席が隣になった2学期からは特に、真吾の席に来る事が多くなったような。
 要するに宏文も同じ穴の狢なのだ。
 宏文も愛が気になっている……宏文がどこまで本気で愛を好きなのかは聞いた事はない。恋愛の対象として本当に近づきたいのか、真吾のようにただ憧れのまま思っているだけで満足なのか……。

「まぁいいけど……あ、先生来たみたいだよ」
「ホントだ。戻るわ」

 爽やかに手を上げて、自席へ戻って行く宏文。
 他のクラスメイトたちも慌てた様子で皆、自席へと戻っていった。
 その時に偶然、彩夏と目が合った。
 彩夏はどギツイ目で一瞬だけ睨んだ。しかしすぐにツンとした様子で、フイと目を逸らす。その様子に真吾は何だよ……と、口を僅かに尖らせた。
 怒ってるように見えるけど、気にはされているという事なのか……?
 彩夏の後姿にぼんやりと思いながら、教壇に立つ理沙に真吾は視線を戻した。理沙の隣りに見慣れない女子が立っている――転校生……?
 背中まである燃えるような赤毛がかなり目を惹く。顔も結構な美人だった。

「転校生を紹介する。自己紹介して」
「ライラ・|C《クレア》・霧島《きりしま》デス。父が日本人で母がアメリカ人のハーフで、3ヶ月前までアメリカに住んでマシタ。日本語は習ってマシタが、まだ不慣れデース。ヨロシクお願いしマース」

 自己紹介を終えたライラは、片言と不釣合いな綺麗な笑みを浮かべるとペコリとお辞儀した。クラスの男子共は色めき立ったが、女子の半数はライラが美人だからか面白く無さそうな顔をしている。
 真吾は変なのが来たなァという感想と、女子の転校生という部分で気が重たかった。堕児の餌食になられて困るのは真吾だからである。

「席は……ああ、佐川の隣りが空いてるな」

 という理沙の言葉に、佐川大樹《さがわたいき》はガッツポーズをする。佐川以外の男子たちはガックリ肩を落とし、真吾はそりゃそうだろうなぁと思った。
 佐川は何せ女子にモテモテのイケメンで手も早い。噂でしかないが、彼女を結構とっかえひっかえしてるという話は学内でも割りと有名だ。
 そんな佐川の隣りに美人が来たのだから、佐川がライラに手を出さない理由がない。クラスの男子共ががっかりするのは当然だった。

「…………?」

 ライラと目が合ったような……?
 席に着く前にこちらを一瞬、見たような気がした。だが周囲の男子が目が合ったと色めき立ったのを見て、真吾は気の所為だなと思い直した。
 席に着いたライラに、早速アタックを開始した佐川をクラスの男子たちが嫉妬の目で睨んでいる。
 隣の席の愛を不図見ると、愛は少し怖い顔をしていた。
 流石の真吾も驚く――自分と双璧を為しそうな美少女の出現で、愛も面白くない思いを懐いているのだろうか。意外な愛の一面に、見てはいけないものを見てしまったような気がする真吾だった。

■ ライラ・クレア・霧島(きりしま)
 真吾のクラスにやってきたアメリカからのハーフの転入生。
 美人でスタイルも良く、燃えるような赤毛が特徴的。
 身長は167センチ。スリーサイズはB88W57H85
raira.png

■ 香椎宏文(かしいひろふみ)

 クラスで一番仲が良い真吾の友達(文中にもあるように、他に仲の良いクラスメイト男子がいないので一番なのは当たり前ですが)
 フツメン寄りですが、明るくひょうきんで懐こいので性格的な人気者タイプ。
 顔のイメージは、オー・マイ・ビ●ナスに出演してるヘ●リー。

■ 佐川大樹(さがわたいき)

 真吾のクラスメイト。
 女子から非常に人気が高いイケメン男子。ただ軽いので、色々な女の子に手を出してるという噂があります。クラスの女子は噂が立つのを気にしてか、手は出さないようにしてるらしい。
 顔のイメージは韓国版、花より●子に出演してるイ・ミ●ホ。

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2018/07/25 00:00 | 竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

竜を継ぐ者(14)いつもと違う朝の日常①



「どうしたの真吾、その頬っぺた」

 チラッと視線を向けると傍に、母の|滝川美土里《たきがわみどり》が立っていた。
 美土里は、真吾の片側だけ赤い頬に目を向けながら、食卓に目玉焼きやらソーセージやら乗った皿を置いた。
 真吾はやや憮然とした表情で美土里に返事する。

「何でもない。触れないで……」

 どことなく幼気で38歳とは思えない愛々しい美貌に呆れた笑みを浮かべて、美土里は肩をひょいと上げた。
 キッチンへと戻る美土里と入れ替わりで、美里がテーブルに着く。
 ダンディイケメンの父親に似た端整な目鼻立ちを、不機嫌そうに顰めさせて一瞬だけ真吾を睨みつけた。

「まだ根に持っているのか?」

 声を掛けると、美里は不機嫌な顔をチラリと向けてプイとそっぽを向く。
 まだまだ風呂場での事故を根に持ち、不機嫌全開だ。
 しかしあれは事故だし、こっちだってビンタ食をらった――そろそろ許してはくれないだろうか。

「なあ――謝っただろ~?わざとじゃないんだし、そろそろ機嫌直せよ」

 朝から気まずい雰囲気に嫌気が差して、真吾は不機嫌な横顔にコソコソと囁いた。小声なのはほんの少し、ジロジロ見てしまった後ろめたさからである。

「だって――絶対に見たもん……」

 いつもは素直な奴なのに、今朝はなかなかに手強い。
 まだ許す気なんてないんだからというような、強気な顰めっ面。頬を少し赤らめているのは、恥らいが僅かながらあるという事なのか。
 兄を相手にそこまで気にする事もないと思うのだが……。

「見てない見てない」

 こんがりと焼かれたトーストに歯を立てながら、真吾は面倒そうに答えた。
 鬱憤をぶつけるように、美里も自分のトーストにジャムを乱暴に塗ったくる。
 乱暴すぎて皿の周囲にジャムが飛び散って、非常に汚らしい。乱暴なのは幼少期からずっと一緒にいる幼馴染の影響か?
 もう少し淑やかにできないのか……妹よ。
 
「見た!」
「見てない」
「ジロジロ見てたもん!」
「発育途上の尻なんて見ても何も思わないから安心しろ」
「やっぱり見たんじゃない!」

 売り言葉に買い言葉な口喧嘩が唐突に勃発してしまった。
 こうなる予定はまるでなかったのに、口が滑ってしまったので収めようがない。
 その喧嘩の仲裁は、いつも通り外野からやってきた。

「あんたたちいい加減にしなさい!」

 コーヒーのカップを乗せた盆を手に持った美土里がそこに立っていた。
 眦をギュイッと釣り上げた美土里が……。

「だって、お兄が……」
「美里がいつまでも煩いからだろー?」

 まだ続く兄妹喧嘩に、美土里の堪忍袋の緒が切れる。

「いつまでやってるの!遅刻するわよ!?」

 母の頭上には長い角が生えていた。
 美土里の剣幕に、二人は借りてきた猫のように静かになると同時に返事をする。

「ハーイ……」

 ◆◇◆

 黒い門扉を開けて車道に出ると、左手に同じ高校の制服を着た見知った顔が出迎えた。
 同学年で幼稚園からの長い付き合いの隣人、|相原千佳《あいはらちか》だ。
 所謂、幼馴染というやつ。
 腐れ縁もここまで続くと男友達と変わらないものがあるが、千佳の容姿がそれを増長させている部分も否定はできない。
 少年のような栗色の短い髪と、陸上少女らしい天然の小麦色の肌。
 腰のラインが貧弱で胸の起伏はささやか……華奢と言えば聞こえは良いが、色気とは縁遠いボディライン。
 だからと言って、真吾が貧乳を否定しているわけではない。
 ギャルゲーでもアニメでも、貧乳女子は立派な属性だ。二次元のチッパイ少女には、幾らでも魅力的な雰囲気の子は沢山いるのである。
 故に、千佳に足りないのは女性らしい――それ以前の、女の子らしい雰囲気。千佳には男がグッとくるような雰囲気がまるでない。
 それはきっと、容姿に伴った男の子っぽい性格にもあるのだ。
 キッパリ、さっぱり、ハッキリ。
 千佳を表現するに相応しい三つの言葉である。それは千佳の長所でもあるのだが、女の子らしいかと聞かれると……。

「珍しいな――今朝は陸上部の朝練は?」
「真ちゃんおはよ~。寝坊し――ふあぁ~……」

 語尾をしっかり体現するように、千佳は大きな口を開けて眠そうに息を吐いた。乙女という言葉がさよならしそうな見事な欠伸だ……。
 こいつ……女子高生という自覚はあるのか?
 そんな千佳をたおやかな女性の声が呼び止めた。

「千佳、ちょっと待って……」

 千佳の後ろから現れたのは息を切らせた、30歳そこそこに見える佳麗な女性。
 ウエーブをつけた長い髪を一つに結わえた、実際は39歳の美熟女――千佳の母親の|相原千鶴子《あいはらちずこ》である。

「何さ母さん、息切らしてさ」
「あんたお弁当忘れて行ったから……」

 こうやって見ると本当に対照的だと真吾は思った。
 並んでいるのを見ていれば、確かに血の繋がりを感じる程にそっくりではある。だが雰囲気が赤の他人だ。
 美人で淑やかでスタイルも良くて、ご近所の男性陣にも人気がある千鶴子に、憧れを仄かに懐いた経験は真吾にもあった。
 弁当を無事手渡した千鶴子を見送りながら、何の気なしに呟いた。

「女らしさが遺伝しなくて残念だったな?」

 その瞬間、重たい音と共に腹に鈍い衝撃が走る。千佳が女の子らしく見えない最大の理由――それは乱暴ですぐ手がでる所だと思う……。

「ごふ……ッ」
「男みたいで悪かったねぇッ!」

 真吾の鳩尾に千佳の拳がクリーンヒットしている。
 ヨロリとよろめくと千佳の肩に手を掛けた。
 ――が、その瞬間。真吾の脳裏にフッと映像が過ぎった。
 小学校の――低学年くらいだろうか。
 背中に届くくらいの長さの黒髪を、美里のようにサイドを編みこみにしたヘアスタイル――後姿なので顔は良く見えない。
 季節は夏なのか、少女は萌黄のキャミソールワンピースを着ている。
 少女の小さな手は、浅黒い骨ばった手に繋がれていた。
 前をずっと向いて歩いていた頭がフッと横を向き、少女の顔が見えた。
 顔に見覚えがある。あれは――。

「真ちゃんってば!」

 自分を呼ぶ声で我に返った。
 気づくと千佳の肩に頬を着けているらしく、ぼんやりとした視界に健康的な小麦色の首筋が見えた。視線を上げていくと眉を顰めた、怒って良いのか困って良いのか迷っている千佳の顔。

「千佳…………」

 萌黄ワンピのあの子は――千佳だ。
 小学校2年以前の記憶はだいぶ怪しいが、記憶に残っている千佳の姿は少年と見まごう逞しい姿ばかりだ。
 ただ、あの姿に真吾は朧げながら見覚えがあった。
 ワンピース姿の千佳は、小学校2年の頃の――確か夏休み。それ以上の記憶はないが、千佳もあんな女の子らしい姿をしていた頃もあったんだな。
 懐旧の情に思わず口角を緩ませる真吾だったが不図、奇妙に感じた。
 今まで思い出しもしなかったのに、どうして突然まるで白昼夢みたいに懐古風景が脳裏に浮かんだのだろう?

「もー!真ちゃん重たいんだよ。いつまで寄り掛かってんのさ!」

 焦れたような千佳の声が耳元でグワンと響いて、真吾はビクリと驚いた。

「ああ、びっくりした……何だよ大きな声で」
「そのまま喋るなぁ~、息が~~~!」
「何だよ、別にいいじゃんか……ケチ」

 千佳はこそばゆそうにモゾモゾと身悶えながら、頭を背けるように遠ざける。
 しかし邪魔する髪のない首に、結局は真吾の息が直撃してしまうようだ。千佳は酷くくすぐったそうに顔を顰めた。
 終には真吾の頭を向こう側へ押しやろうと、グイグイ手で退けようとする。

「クラクラするんだから少しくらい肩かしてくれてもいいじゃん~」
「も~!重いよ~、いい加減にしろよなーッ」
「何ならこのまま引きずって行ってくれていいよ~」
「ボクに真ちゃんが運べる訳ないだろ~ッ。身長差を考えて~……!」

 肩に抱きつくようにしな垂れ掛かると、千佳は酷く焦った顔をした。
 千佳がいきなり暴れ出すものだから、体勢が前方へ崩れた。

「いい加減に離し――わわ……!」
「危な――」

 流石に華奢な千佳の身体では支えきれずによろけた。
 グラリと後ろによろめく千佳の細い肢体を、真吾は千佳の腰に急いで腕を回して支えようとする。腰が抱き寄せられたような形で、千佳は真吾に抱き竦められた。

「おっと。ふざけ過ぎた――って、何を赤くなってんの?」

 千佳はギョともドキともつかないような、引き攣った表情のまま硬直していた。

「な…………な、なってないから!いーから離せ!」
「いきなり暴れるな――ぐは……ッ!」

 再び千佳の拳が鳩尾にクリーンヒットする。よろめいた真吾は、今度は地面にうっつぷした。
 腕から開放されて、ホッとしたように息をつく千佳。
 千佳の顔は緊張したように強張り、頬が矢張り赤くなっていた。
 やっぱり赤くなってるじゃねーか、嘘つきめ……鈍い痛みを訴える腹を抱えて、遅まきながら思春期でも来たのか千佳は……と、真吾はそれを少し憂鬱に感じた。
 以前はこの程度のじゃれ合いは普通だったはずなのにな――と。
 千佳は女を意識する事なく接する事ができる、数少ない周辺女性の一人だ。そうでなければ長く続く事はなかったし、女性を避けていた頃に遠ざけてしまっていたに違いない。
 少し過度なスキンシップも平気でできてしまう千佳は、真吾にとって大切な友達であり家族みたいなものだ。
 だがそんな千佳にも、じゃれ合いへの羞恥が生まれたのかと思うと……少しだけ寂しい気持ちになった。
 互いに年頃だし、潮時と甘受するしかないのだろうけど……そういう部分が面倒だな、男女の幼馴染ってやつは。

■ 滝川美土里(たきがわみどり)

 真吾の母親で38歳。
 小柄で未だに20代に間違われるような童顔な容姿です。
 美人というより可愛いというようなタイプ。真吾は母親似ですね。
 身長は152センチ。スリーサイズはB85 W60 H85。
midori.png

■ 相原千佳(あいはらちか)

 真吾と美里の幼馴染。真吾とは同級生で高校も同じ。陸上部所属。
 活発で明るく、少し乱暴なところがありますが、とても世話焼きで人情家。
 男の子っぽくしてますが、長年していたのでもう既に地になっているかも……でも根っこは結構乙女チックですね。
 文字だけでは男の子っぽさが出し切れない為に「ボク」っ子にされました。以前の千佳ではボーイッシュさが足りん!と苦肉の策……文字だけでボーイッシュにするのは矢張り難しい。
 身長は154センチ。スリーサイズはB79 W55 H83。
chika.png

■ 相原千鶴子(あいはらちずこ)

 千佳の母親で39歳。
 優しげで清楚系な美人。
 貞淑で上品なのでご近所にも覚えの良い、良い母親って感じです。
 身長は162センチ。スリーサイズはB90 W61 H86。
tizuko.png

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2018/07/24 00:00 | 竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

竜を継ぐ者(13)なんて朝だ



 気がつくと、目の前の情景が唐突に変わった。
 見渡す限りの、白い光の洪水だった。それを真吾は、眩しそうに目を一瞬だけ細めながら眺めた。次第に目が慣れてきたのか、開けていられないという程でもなくなってくる。

「おまえは、光を見たはずだ」

 そして唐突に、今度は声が頭に響いてきた。声のような、思念のような……そんなものが唐突に、意識に流れ込むようにして聞こえてくる。
 光の次は妙な声かよ。
 真吾はボヤこうとして、声が出ないことに気がついた。どうして声が出せないのか焦っているのに、声の方はお構いなしだ。

「今日おまえは、白い光を見ただろう」

 ――と。
 その声には何となく聞き覚えがあるような気がしたが、思い出せない。喉まで出掛かっているのに出ないような、もどかしさだった。

「女の身体に白い光を、おまえは見たはずだ」

 白い光……白い光ねェ。
 悶々としながらも、白い光について真吾は考えた。渡辺彩夏の下腹部を包んでいた光を言っているのだろうが、説明してくれるとでも言うのだろうか。
 声は、真吾の思考を肯定するように続けた。

「あの光はおまえが第一の覚醒に至った証。刻印覚醒が起動した合図のようなもの。おまえは女を犯した後に奇妙な生物を見つけたはずだ」

 答えてくれるのは有り難いが、犯したとか言うなよ。
 真吾としては、和姦のつもりでいた。拒めない雰囲気に持ち込んで、確かに強引に同意を捥ぎ取ったかもしれないけど。
 それにしても、覚醒っていったい何の事なのだろう。
 真吾は漂いながら、耳を傾ける。声が出ないのだから、大人しく聞いているしかない。声がこちらの思惑を読んで、答えてくれるのを待つしか無かった。

「あの光はおまえの精が、あの生物に取り込まれた為に引き起されたものだ。在れは混沌から生じた陰より生まれた魔物。その幼生で、名を堕児《おとしご》と云う」

 取り込まれたとは、それは食べる――食事という意味で良いのか。精液が餌とは……何だか、ファンタジーもののエロゲのようだ。

「在れは生命力《エナジー》を糧とする。精を啜るのは、生命力を宿主の外より得る為だ」

 矢張り食事という意味かと、真吾は眉を顰めた。
 宿主の生命力を直に取り込むと、命の危険の可能性があるのかもしれない。宿主を殺ししてしまわないように、男の精液からエナジーを取り込むのは、安全に成長する為なのかも。
 まさかとは思うが、彩夏が酷く発情していた事も関係あるのだろうか……思えば人が変わったようにエロエロだった彩夏。あれは最早、別人だ。餌を効率良く得る為の効果だと考えれば、在り得るのではないだろうか――。

「陰の気の濃い混沌である在れは、陽の気を極端に嫌う。女が自我を取り戻したのは、おまえが飲ませた精の効果だ――」

 彩夏が唐突に自我を取り戻した背景には、このような事情があったのか。
 声は、彩夏が正気を戻した理由は、真吾の精液が堕児の気を、強い陽の気で浄化した為だと語った。偶然の精飲が、身体に巣食う堕児の気を浄化したっていう事だろう。
 堕児にとって真吾の精液が弱点だとも、声は語った。

「精はおまえのものでなければ意味がない。堕児が堕胎――死んだのも、おまえの精の働きによるもの」

 は…………!?
 真吾は呆気に取られた。
 彩夏の中にいた堕児が死んだ理由。それは自分の精子によるものだという事は、真吾にも理解できた。だが、問題はそこじゃない。
 流れ込む意識の伝えている事は、まるで自分の精液でしかアレは殺せないと断言しているように聞こえるのだ。同じような気を有している雄であれば、堕胎……とかいうのは、何も自分で無くともできるのでは無いのかと、真吾は思ったのだ。
 しかし続く声の言葉は、真吾の思いを裏切るものだった。

「おまえには堕児に憑かれた女を知覚する力も備わっている。おまえの満ちていない力では腹に触れる必要があろうが、その女が犯すべき相手かどうかを知るには十分なはずだ」

 犯すべき相手かどうかって、何を言っているんだ。こいつは……。
 それじゃあ、まるで……。
 真吾が苦悩している間にも、声は淡々と先を続けた。

「堕児の巣食う肉体の判別と、精で堕児を堕胎させる力――これが第一の覚醒で得られる刻印覚醒だ。おまえはその力で以って、堕児に憑かれた女を助けなければならない」

 助けねばならない――何故、義務のような物言いをするのか。あの生物を殺す事そのものが、まるで定められた使命だとでも言っているように真吾には聞こえる。
 精液で殺せるのなら、誰のものでも良いじゃないかと、真吾は煩悶する。その力が自分の肉体にあるらしい事は理解できる。だがそんな事は、やりたい奴がやれば良い事だ。

「良いか忘れるな。おまえ以外の精は堕児のただの糧……刻印を持つおまえ以外に堕児は堕胎できないし、誰も代わる事はできない掛替えのない稀有の力だ」

 勝手な事を言うなよ。本当に僕しかいないって言うのか……!
 重たい意識の中で強くそう思った時、真吾の意識は薄れ始めた。
 何を言っているのか聞き取れない声は、まるで傷のあるテープをレコーダーで再生させているように飛び飛びに聞こえた。

「おまえは刻印を……承……る……。おま……だけが……児に蝕ま……た肉体を浄化でき…………を持っている。女たち……救えるの……おまえだけ――」

 待て、まだ知りたい事があるのに……!
 真吾は目の前に手を伸ばす。縋るように伸ばされた指先も、暗くなる視界に邪魔されて見えなくなっていった。
 聞きたい事はまだあるのに、意識がどんどん擦れていく。
 どうして自分にそんな力が、どうして自分だけにそんな力があるのか知りたい。結局、刻印覚醒って何なんだ。刻印って何だよ。
 もし、あの魔物を放って置いたら――?
 そして、そのまま意識は深淵に沈んでいった。

 ◇

 チュンチュンという鳥の囀りが、朝の訪れを耳に届ける。
 瞼を開くと、ぼんやりと見慣れた天井が目に映った。
 気だるげに首を回しながら、真吾は周囲の様子を見る。
 あ……あれ?

「僕の部屋……?」

 パソコンを置いた勉強机、その隣にテレビ台と本棚……全体的にモノトーンで纏められた、見慣れた自分の部屋だ。
 ――ってことは朝か……?
 起抜けで頭がボーっとする。
 今まで何を見ていたのか、思考力の低下したままの頭で真吾は考えた。
 何か変な夢を見ていたような……。

「…………堕児……か」

 そうだ……夢を見てたんだ。昨日の妙な出来事に符合するような……。
 自分が刻印覚醒とかいう能力者で、精液で昨日見たあの生物……堕児は、堕胎――死ぬと。女性の腹の中の堕児を知覚できるだとか、精液で邪気を祓えるだとか……そんな事も、言っていた。
 最後に告げられた言葉は良く聞き取れなかったが、確かに言っていた「女たちを救えるのはおまえだけ」だと。
 昨日の事がなければ、ただの変な夢だと一笑に伏して、真吾も終えていた。
 しかしこうも見事に昨日の出来事と夢の内容がハマリ過ぎていると、思い込みだけで夢を見たのだと無視もできない……全てが事実なのか、それとも虚実ない交ぜなのか、見たものが夢では流石に判断に迷う。
 だがその内容を鵜呑みにするのなら、あの夢は……。

「僕にどうしろって言うんだ。僕は普通の高校生だよ……」

 女性をレ●プしてでも助けろって……!?
 真吾は寝癖のある髪を、苛立ちも露に両手でワシャワシャした。
 どうして自分なのだろう、レ●プなんて望んでないのに。

「はぁ…………」

 真吾は深い溜息をついた。
 いや、でも……どうなんだ。レ●プではなく、犯す――だったら……?
 全く望んでないと、言い切れるだろうか――と考えると自信が無くなってくる。
 暴れる女の子を無理矢理に押さえつけて――というのは流石に抵抗を感じるが、昨日の彩夏はどうだ。強引に抱いた事に変わりはないが、レ●プとも違っていた。
 例えば彩夏の時のように、誘導して犯す行為に抵抗は無い気がする。

「ああ……でもなァ……ああ~……面倒臭ェなぁ、もう……!」

 頭をグシャグシャと掻き毟りながら、真吾は煩悶した。
 考えるのが嫌だ。
 何で朝からレ●プ云々で悩まなくてはいけないのか。高校生のする悩みじゃないだろ、コレ……。

「うわ、冷た!」

 ベッドから起き上がると、腹にヒヤリと冷たいものを感じる。
 パジャマのズボンのゴムを持ち上げて見て、真吾は閉口した。ボクサーパンツの前部分に大きなシミが広がっているではないか……!
 真吾は深~く、溜息をついた。
 これは俗に言う、夢精というやつだ。何か変な夢でも見たかな……。
 そういえばと、黙想に耽りながら目を瞑る。堕児だ何だという夢の前に、他にも夢を見ていたような気がする。脳裏に三角の黒子がサッと浮かぶと、ぼんやりと思い出されてきた。
 あれ、何かヤバい夢を見たような気がする……。

「黒子の女子と確か……あ――――!!」

 事細かにではないが、そこそこはっきりと真吾は思い出した。
 身体を自由に使われるくらいなら犯した方がマシだ――と、自我のない愛を犯しちゃったんだっけ……夢の中でだけど。しかし犯すのに抵抗を感じた癖に、躊躇もなく|膣《なか》出しとか……何て最低な奴だろうか。
 しかも三角形の三ツ星黒子って考えてみると、彩夏の太腿ではないのか。身体は彩夏の顔は愛って、どういう組み合わせ……。
 考え込んでいると、何となくわかった気がした。
 知ってる女性の生身の身体が彩夏しかいないから、身体だけ彩夏の愛が夢に出てきたという事ではないだろうか。最低かよ……自分の夢ながら呆れた。

「取り合えず下着を替えないと……」

 時計を見ると、起床の予定時刻よりも30分ほど早かった。
 気色が悪いし、どうせなら朝シャワーで身体も頭もさっぱりしよう。
 下着と制服を手に取り、風呂のある一階へと真吾は向かった。

 ◇

 脱衣所のドアを開けたらそこには、妹の|滝川美里《たきがわみさと》が立っていた。
 洗面台の前で頭からバスタオルを被って、全身素っ裸。
 胸はタオルで辛うじて隠れているが、下の方は――小さな尻が丸見えだ。
 髪を拭いているのか、タオルでサイドの部分をゴシゴシと擦っていた。

「エッ……お兄《にい》!?」

 こちらを茫然と見ている美里。
 妹の裸体を見るのは、美里が小学校3年生の時が最後だが――流石に中学2年ともなれば全体的に丸みを帯びて、女性的な体つきになっていた。
 女の子って変われば変わるものだなぁなんて、思わず繁々と見てしまったのがマズかった。
 美里の可愛い顔がみるみるうちに赤く染まっていき――。

 バチーン!

 美里の平手が真吾の頬に飛んできた。
 眦を釣り上げ睨みつける美里は、少し涙目だった。

「いつまで見てるのよ!」
「ご……ごめん!」

 真吾は廊下にすぐさま飛び出して、ドアを閉める。
 兄妹なんだからそこまで気にしなくてもいいじゃないか。ビンタする程の事か!?
 打たれた頬を押えながら、ドアに寄り掛かる。
 真吾は、何て朝だ……と、思った。

■ 滝川美里(たきがわみさと)

 真吾の妹で中学2年生。バトミントン部に所属してます。
 明るく活発で、結構世話焼き。
 幼馴染も同じくしていて、昔から三人で良く遊んでいたのでかなりお兄ちゃん子。
 顔は父親の方に似ています。
 身長は153センチ。スリーサイズはB83 W56 H84。
misato.png

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竜を継ぐ者(12)何故こんな事に?学園のマドンナを犯せと!?



 目の前で少女がオナニーをしている。
 ――って、この絵づらはどこかで見覚えがあるのだが。
 既視感――というのか、こういうの。深層心理はそう答えるのだが、吸い込まれるように足は勝手にフラフラと少女に向かってしまう。
 彼女の近くまで来ると、声が聞こえた。

『女を犯せ』

 この状況にも強い既視感を覚える。
 既視感か、違うな……これは身に覚えのある事だ。
 自覚はあるのに、どうしてか記憶があやふやだ……何故なのかは判然としない。
 ただ覚えのある通りに、真吾は目の前の少女に視線を向けた。
 黒のソックスに包まれた細い足首。そこから美しい曲線をなだらかに描きながら、スッと上に伸びる嫋やかな下肢。捲れ上がったスカートから覗くむっちりとしたエロい太腿に、真吾は思わずデレッと鼻の下を伸ばした。
 すると不図、気づいた。
 あれ……何処かでその黒子、見た覚えがあるな……。
 少女の太腿の付根には、見覚えのある小さな三角形を描く三つの黒子があった。
 ――あ、彩夏だ……彩夏の太腿にあった黒子が確かそんな形をしていたじゃないか……頓悟すると視線を少女の顔に移す。
 しかしそこに居たのは彩夏ではなかった。

「――結城……さん……?」

 サイドポニーに結わえた、ふわふわにカールした明るい茶の髪。耳垂に金色のピアス……日本人離れした顔立ちをした、長い睫の超絶美少女。
 目の前で身体を横たえオナニーしていたのは、真吾の通う高校のアイドルにして男子たちのマドンナ、結城愛《ゆうきあい》……真吾の憧れているクラスメイトだった。
 カッチーンと音が、どこかから聞こえそうな程にショックで固まる。
 何で結城さんがこんな事をしているんだ。しかも僕の目の前で――喪心しそうな頭で真吾は逡巡する。
 オナニーに耽っていたのは、彩夏だったはず……あの三角形の黒子は彩夏のもののはずだ。何故それが愛になっているのか、それとも愛にも同じような黒子が?
 真吾の動揺などお構いなしに、愛はぱっちりとした眦を切なげに悦楽で歪め、ポテッとした愛らしい唇から喘ぎ息を洩らしていた。
 そんな顔を見せないでくれよ……憧れの人の悦に浸る顔に煩悶とする。真吾の中では、どちらかと言えば見たくない気持ちの方が強い。
 性的な意味でも、恋愛的な意味でも……愛に対して、こうしてみたいという邪な思いは懐いた事はなかった。
 ストイックだと思われそうだが、オカズに使った事が皆無ではないのでストイックという事もない。
 だから性の対象外という訳ではない……だが、真吾は本当に子供じみた妄想しか、彼女に懐いた事がないのだ。たまたま見てしまった太腿をオカズに使うとか、どんな下着を身に着けているんだろう程度の幼稚な妄想を懐く程度。
 しかし、ここまであけすけな欲望の色眼鏡で愛を見た事はない。
 というよりも見れない……。
 彼女が高嶺の花すぎて不純な妄想を懐く事すら恐れ多く、望むに至れない。
 学園中の男子が彼女を狙っている中で、ただ憧れを懐いているだけの地味オタ男子の真吾が、近寄る余地など全くないし、下品な妄想を懐く事すら分不相応だ。
 抱きたいなどという高望みは、最初から持たなければ望もうともしなくなる。
 思いも進まない代わりに、何も望む事もなくなる――そうする事で、心の平穏を真吾は保ってきた。

「どうして僕にやらせるんだよ。嫌だよ……」

 愛を犯せと……?
 高校に入学してからずっと憧れていた人を、犯せって言うのか。
 今まで抱きたいと望んだ事もないのに、抱くではなくレ●プしろと……。
 それでも――真吾の男の部分は、心を代弁するかのように逞しく隆起し、固く反り返っていた。
 声はもう一度、命令するように真吾に告げた。

『早くその女を犯せ』

 ――と。
 重苦しい思いが真吾の心に渦巻いた。
 それを跳ね除けた為に、苦い思いを懐いたぼんやりとした記憶。
 襲わなければ、望んでなくても無理矢理に身体を使われる――嫌だ。
 もうそんなのは嫌だ。命令されて手を染めるのもムカつくが、他人に身体を勝手に使われるのは更に腹立たしい。
 真吾が望む望まないに関係なく、どう足掻いても自分の身体がレ●プに使われるのなら、自分の意思とは関係なく使われるくらいなら――。

「…………ごめん、結城さん……」

 肌蹴た胸元から零れる色白な双峰に、真吾は躊躇しながらも手を伸ばした。
 その脹らみを確かめるように手のひらで揉みながら、可憐な蕾を舌で絡め取る。
 愛は可愛らしい声で真吾の愛撫に応えた。

「あんっ!ああっ……あっあっ……あぁ~ん、気持ち良い、滝川くん……ッ」

 何とも言いようのないドロドロとした気持ちで、それを聞く。
 本当は愛のエッチな声など聞きたくない。いや――心の底では違うのかも……心が複雑すぎて、理解が追いつかない。
 反倫理的な相手でもないのに、何もここまで躊躇いを覚える必要はないはずである。しかし真吾には、男の欲望をぶつける事に躊躇する相手が何人か存在する。
 心は不自由なもの……勝手に沸いてくるので意思では手に負えない。愛の情欲を誘う姿を見たくないと拒む裏で、見てみたかったと思う欲望の気持ち――それは理性の働く頭で考えては始末におえない感情だった。

「結城さん……!」

 彼女の手をどかし、ショーツの中に手を忍ばせていった。
 凄いな、ドロドロじゃないか……学園のアイドルも、他の女の子たちと同じ。エッチな気分になればマンコは濡れるし、触れば感じる――まるで愛をはじめて女と認識したように、真吾の心はドキドキと震えた。
 蕩ける秘裂を指で撫でると、熱い愛蜜が指にヌルヌルと絡んだ。
 更に指を深く沈めて、その中を指で押し開くように擦っていく。
 コリッとした感触を指に感じて、指の腹全体でズルズル擦ってやると、愛は柳腰を切なげに揺らせた。

「あん!あっあっあっあっ、イク……あ~!!イクよぉ、滝川くぅ~ん……ああ――あぁ――――ッ!!」

 発情しきった彼女の肉体は、早々に昇ってしまった。
 絶頂したばかりの腰が、物欲しそうにビクビクと痙攣している……エロいな。もっと快感が欲しいのかよ、本当に物欲しそうだな……。
 逝ったばかりの愛の顔を見ていると、堪らない気持ちになった。
 心の奥底から何やらドロドロしたものが、湧き上がってくる……これは劣情か。劣情を、愛に感じているのか。愛とヤりたいと……。
 所詮は僕も男だな……と真吾は心で自分を皮肉った。愛を色眼鏡で見ていなくても、目の前で情欲的な姿を晒されたら我慢できなくなる。
 手を掛けた切欠が強制的でも、愛に欲情を懐いたのは紛れもなく自分自身だ。それを認める事が簡単にはできないから、苦しむ……。
 だから理性で考えてはいけない。
 ショーツを乱暴に剥ぎ取ると、逝ったばかりの膣口にペニスを押しつけた。

「はあはあ……あっ、早く頂戴」

 愛は淫猥に微笑んで、ペニスの挿入を真吾に強請る。
 何て顔で強請ってくるんだよ。自我が無い事はわかってる、わかってるけど……。
 今まで欲望の眼で見ていなかったとしても、このような状況に至ってまで何も感じずにいられるほどお人良しではない。
 今の愛は自我が無いのだから、遠慮する必要なんてないんだ。
 だから愛を犯す事に、罪の意識を感じる必要もない。だって挿れて欲しいと強請っているのは、彼女の方なのだから……。
 自分を満たした劣情は昂ぶりとなり止める事はできなかった。
 愛とヤりたい、愛のエロい姿でバキバキに勃ったチンコを、愛のマンコにズッポリ突っ込みたくて堪らない。

「結城さん、やらしいな……今チンコ奥まで挿れてあげる。ズッポリとね」
「もう待てないよぉ……早く奥まで挿れてぇ……」

 ねっとりと絡みつくような甘い声で強請る愛。憧れの人のお強請りの言葉に昂ぶる劣情……随分と控えめなんだな。マンコは酷いくらいにドロドロな癖に……。
 ペニスを少し挿し込んで、真吾はアレ?と思った。
 このツブツブした感触は、彩夏と同じ――。

「滝川くん、早くぅ……」

 逡巡していると愛に挿入をせっつかれた。

「ごめん、すぐ挿れるから……結城さん意外とスキモノだな」

 真吾は愛の|膣《なか》に強く、そして深くペニスを挿入させた。
 ガツンと子宮を貫く衝撃に、愛の顔が甘美な切なさで歪む。

「深い――ッ!!」

 ペニスの圧迫にビクビクと震える愛の身体を抱きしめると、衝撃の余韻冷め遣らぬ膣道を昂ぶりのままに、苛烈な抽挿で犯した。
 性器どうしがグチュグチュと卑猥な音を立てて摩擦される。
 愛は立て続けの強烈な快感を、体躯を悩ましげにくねらせながら受け止めた。

「凄い……あっあっあっあっ!滝川くんの凄いよぉ、奥にくるぅ……あっあっあっダメダメダメ、そんなにしたらだめぇ~~~!!」

 愛の激しい喘ぎに伴うように、膣壁が奥の方からだんだんと狭まっていく。
 ピクピクという痙攣を微かに発しながら震える膣肉が、雁首をキュウと堪らない圧迫で締めつけてきた。

「結城さん、イきそう?」
「うん、滝川くん激しいんだもん。もうイっちゃう……ッ」
「結城さんがエロいから興奮しちゃって……じゃあ一緒にイこうか」

 頷く愛の腰をしっかりと抱きしめると、愛も背中に腕を回して甘えるようにギュッと抱きしめてきた。
 応えるように抱いた腰に力を込める。

「あん!ああ~ん……滝川くぅ~ん!」

 引き出した腰を振り下ろすようにグラインドさせて、奥を抉るように打ち込むと、僅かに飛び散った愛液が太腿に飛沫のように掛かった。
 そのまま擦るように機敏に膨張を抽挿させると、ぶちゅぶちゅといやらしい音を奏でて飛沫も激しく飛び散る。

「うぅんッああぁあぁあぁ……っ!!」

 腕に抱いた愛の身体がビクビクと生き良く踊る。
 背中を強く抱きしめる愛。膣道もそれに伴うように締めつけて、まるで切なさ極まった恋人どうしの抱擁のように強くペニスをギュウっとしてくる。
 ぞくぞくっと背中に快感が走った。
 逸る気持ちが腰の動きを一気に加速させると、肌を打ち合う乾いた音もどんどん激しいものになっていく。
 合わせるように愛の声も高く激しく、間隔も狭まっていった。一際高く声を上げた愛は、グンと体躯を腕の中で大きく逸らすと――。

「イっちゃうイっちゃう!滝川くんイっちゃう~~~!!あんっあんっあんっあっあっあ――――っ!!」
「僕もイク!結城さん射すよ、膣《なか》に全部射すからね!!」
「射して!滝川きゅんッ膣《なか》に射してぇ~~~!!」

 膣《なか》に射してなんて、あの学園一のアイドル結城愛が言うなんて……しかも僕の名前を呼びながら。ヤバい、凄ェ興奮する――射精を強請る愛の言葉に、真吾の劣情は激しく昂ぶった。
 キツく狭い膣肉を雁首が掻き分けながら奥へと進む。やがて雁首の尖端が子宮の入り口に当たった。
 グイと挿入を強めると、すぐそこまで迫っている昂ぶりを開放した。

 ビュルル……どくっどくっ……!!

 身体を支配する射精の感覚。
 それを感じてすぐに、真吾の意識はいったん遠のいた――。

■ 結城愛(ゆうきあい)

 真吾のクラスメイトで、通う学校のアイドル的存在であり、男子たちのマドンナ。
 誰に対しても態度を変えず媚びた所のない彼女は、男女共に人気のあるまさにアイドルという感じの女の子です。
 超絶な美少女で入学当時から男子の告白が絶えず、喧嘩だけでは収まらずに、乱闘になったという逸話まであったりします。
 彼女には顔のモデルがありましてアメリカのシンガー、アリ●ナ・グラ●デがモデルです。
 身長は158センチ。スリーサイズはB86 W54 H84
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小説家になろう・ノクターンノベルズでも連載中です◇










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2018/07/22 00:00 | 竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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