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竜を継ぐ者(30)もう一度、僕の腕の中で①



「――っぷは……」

 唇が開放された美奈は、空気を求めてその唇に深く外気を吸い込んだ。外気を求める唇は唾液で艶めいて、薄く開かれた双眸はまるで熱に浮かされたように夢見心地。堪らないくらいソソる美奈の表情――思わず抱きしめる手に力が篭ってしまう。
 ギュッと身体全体に押しつけられる、柔らかい美奈の肢体。ふんわりとした胸の起伏やなだらかなお腹のライン……その全ての肉感が、真吾の身体に体温と共に生々しく伝わってくる。
 興奮を抑えきれずに、腰が僅かに前後に動く。ビクビクと脈動する雁首が、しとどに濡れる彼女の割れ目をなぞるように浅く抉った。
 美奈は外気を仰ぐ可憐な唇から、甘い声を微かに弾ませた。

「どうしよう……ごめん。美奈が抱きたい……」

 本当に思わずといった感じで、真吾はボソリと呟いた。
 美奈は、小さく「えっ?」と、聞き返すように驚いた。
 確かにこんな状況だから、誰が目の前にいてもエッチしたくなったとは思う。だけど、性欲だけで抱きたくなった訳じゃない。
 抱きたいと思ったのは、美奈が欲しいから……。

「…………いいよ」

 はにかむように俯きながら、コクリと頷く美奈。
 消え入りそうな諾了の声に、無理はしていないかと真吾は不安になる。

「無理……してない?」
「――うん。してない」

 上を向いた時に見せてくれた、彼女の微笑みにキュンとときめく。
 求められた事を悦ぶ、乙女の恥じらいがほんのりと浮かんだ美奈の笑顔……抱かれたいと望む美奈の心が、何となく伝わってきた。

「美奈――今だけ僕のものになって欲しい。僕も、今だけは君だけのものだよ」
「――滝川くん……」

 美奈の漆黒の瞳は、まるで天上の星を全て奪ったように輝いて、うるりと揺れたかと思うとしとどに濡れた。
 溜息が零れそうな程に美しい彼女の双眸を見つめながら、愛でるようにそっと唇を奪う。押しつけられた唇が啄ばむように彼女の唇を甘噛みすると、美奈は陶酔するような吐息を静かに洩らした。
 ゆっくりと沈むように、ベンチに倒されていく美奈の肢体。
 細い肢体の上に、意外としっかりとした真吾の身体が被さると、後ろ髪が惹かれながらも唇が離れていった。
 見下ろすような真吾の影が、美奈の瞼を霞めたその時に、異変は起きた。
 美奈の肩が、何もないのにビクリと震えたのだ。
 肩を竦ませるように、まるで放心している時に肩を叩かれたような、そんな反応。僅かではあるが、身体も緊張したように強張っている。
 次第に美奈の身体は微かに震え始めた。
 今までそのような雰囲気はまるでなかったのに、どうして突然……身を寄せてやると不思議な事に、震えも治まり緊張も解けて、美奈の身体は何事もなかったかのように平常に戻った。
 そういう事か……。

「…………?滝川くん、どうしたの……?」

 思わず動きを止めてしまったからか、美奈が不思議そうな顔でこちらを見ていた。

「あ……いや、何でもないよ」

 真吾は、ぎこちなく微笑んだ。

小説家になろう・ノクターンノベルズでも連載中です◇










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2018/08/10 00:00 | 竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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