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竜を継ぐ者(20)委員長は男心がわからなすぎる



「私が滝川くんの味方になってあげるって、言ってんの!」

 み……見方?
 意外な彩夏の台詞に、真吾は呆気に取られた。

「あ、ほら……何かあった時に、味方は絶対に必要だと思うから……」

 付け足すように、彩夏が急いで言う。
 その言葉で、彩夏が何を心配しているのか理解できた。

「クラスで孤立する事にならないか、僕を心配してくれてる訳か……委員長は」

 すまなそうに頷く彩夏を見て、真吾は小さく溜息をついた。
 何も知らない女の子たちを、真吾は襲うのだ。下手したら、クラスの女子を全て敵に回しかねないような、危ない橋を渡るような場面も否定はできない話だ。
 彩夏の言わんとしてる事は理解できるし、確かに味方は必要なものだとは思う。
 だけど、女の子に守られるなんて……。
 真吾にも、ちっぽけでもプライドがある。

「気持ちは有り難いけど……だからって委員長が犠牲になる事はないと、思うんだけど……」
「別に犠牲だなんて思ってないわよ」
「そうは言っても、関わらせるの心苦しいよ。女の子に……」
「けど、放って置けないのよ!」

 本当に思わずといった感じで、彩夏がぴしゃりと言った。
 驚いて、思わず真吾は目を丸くした。
 大声を上げて気まずいのか、彩夏は恥ずかしそうに俯く。そしてボソリと、うっかりすれば聞き落としそうな声で、彩夏は呟いた。

「だって……さっきから何か、苦しそうなんだもの。滝川くん……」

 何だか不意打ちでアッパーを食らった気分だった。
 見抜かれてたんだなと。
 夢を見た朝にも色々と考えたし、美里に手を掛けた時にだって思った……どうして自分なのかと。納得のいかない微かな苛立ちは、今も心の底に静かに眠っていた。

「そりゃあ……何で僕がって思う部分もあるよ。幾ら女の子が抱けるからとはいえ、所詮レイプだからな」
「本音があけすけなんだけど」

 彩夏のジト目に、真吾はきまり悪そうに目を逸らした。
 素直になり過ぎたか……。

「し……仕方ないだろ、僕だって男だもん。女とエッチな事がしたいのは、本音にあるよ……」

 口を尖らせると、彩夏は半ば呆れた顔をした。
 女の彩夏に男の性欲を理解しろと言うのは、無理な話なんだろう。

「まったく、正直すぎだわ……」

 案の定、彩夏に男の性欲は理解できなかったらしい。完全に呆れてしまったのか、彩夏に溜息をつかれてしまった。

「本音が滑ったからには、否定してもワザとらしいだろ……」
「別に責めてないわよ。けど、納得はしてないって顔してるね」

 チラリと、顔を覗き見る彩夏。
 何だか見透かされたような気がして、思わず声を荒げてしまった。

「当たり前だろ!?レイプなんて望んでない!身体を好き勝手に使われるのは嫌だから、仕方なかったけど……」

 大声を出すつもりは無かったし、こんなキャラでも無かったはずだ。
 さっきから何を、激情に駆られているのか。
 けど、心の底に沈んだ鬱屈した感情が溢れると、止まらない。弱さを懐抱した、真吾の本音だった。

「本当は僕だって、普通に恋愛したかった。普通にデートして、好きな子を普通に抱きたいって思うし……」

 高校に入ったら、彼女を作るのが望みだった。普通に恋愛して高校生活を楽しむのが、夢だった。
 その望みも、奇妙な能力が目覚めたが為に、儚く消えた。
 しんみりと俯く彩夏を見て、真吾はしまったと思った。
 そんな顔をさせるつもりは、無かったのに。若しかして同情されてる?
 女の子に哀れまれるのは、ちょっと嫌だな……男としては。それに彩夏に同情して貰う必要は無いし、違うと思う。
 現状にムカつかない訳ではないが、こうなった以上は仕方ないと思った。放って置けないのなら、今は運命とやらにも従ってやるしかない。
 考えてみれば、男としてはオイシイ話ではあるのだから。

「いや、その~……レイプを歓迎した訳じゃないけど、強い拒絶もない訳で……どちらにしろ、女の子とエッチできる事には変わりは無いからさ。ハハ……ッ」

 しんみりした空気が嫌だったので適当におどけてみたら、本音が出てた。
 だいぶ呆れられたが、彩夏もホッとしたような顔をしていた。きっと彩夏なりに、心配してくれていたのだろうと思う。
 しんみりした空気もどこかに飛んでいってしまったようで、真吾も胸を撫で下ろした。

「滝川くんが何を気にしてるのか知らないけど、止めないわよ。私は別に、犠牲になってるなんて思ってないんですからね!」

 うやむやなまま放置するつもりだったのに、彩夏が元の話に戻してしまった。
 やれやれ……これは、諦めてくれそうにない。

「わかったよ、もう……委員長も、意外と強情だなぁ」

 と言うと、彩夏は気づいたようにハッとした。

「その委員長っていうの、そろそろ止めてくれない?」

 彩夏は真面目な顔で、そう言った。

「何を言うのかと思えば、そんな事かよ……」
「そんな事とは何よ!あまり好きじゃないのよ、そのあだ名……」

 少しテレながら、ボソリと言う彩夏。

「へ~……初耳だな。だって皆そう呼んでるじゃない」
「だって……委員長辞めても、そのあだ名なのよ!?卒業しても同窓会で、そう呼ばれるんだもの……堪らないわよ!学校外でも、そう呼ばれるのは……ちょっと恥ずかしいのよ!」

 なかなかの激情を露に熱弁する彩夏が、思いっきり意外だった。
 か……可愛いな、真吾はこっそりと苦笑した。
 制服姿だと余計に、委員長然としている彼女では「ああ見るからにそんな感じ」とか「安易なネーミング」とか、通行人Aにも当然のように認識されそうだし、確かに街中で呼ばれると少し恥ずかしいか。
 思い出してみると、彩夏と仲の良いクラスメイトは、彼女を名前で呼んでいたような気がする。

「じゃあ……渡辺さんって呼べばいい?それとも彩夏?」
「何でいきなりフレンドリーに名前なのよ。周りに変に思われるじゃない!」
「テレてんの?顔が真っ赤だけど――」
「う――煩いわね!」

 赤面を指摘すると、彩夏は怒って横を向いてしまった。
 時計を見ると、そこはかとなく良い時間になっていた。
 真吾としては、切り上げたいのが正直なところ。あまり長い時間、密室に二人きりというのは率直に言えば、しんどいのだ。

「で、渡辺さんの用事は終わったよね?」

 そう切り出すと、彩夏はドキッとしたような顔をした。
 その表情に何か恥らうものを感じて、真吾は動揺する。

「な……何?まだ何かあるの?」
「吹聴するような人だとは、思ってないけどさ……あの日の事、秘密にしておいてよ?」

 遠慮がちに頷く彩夏から、何か直視したらマズいものを感じて、真吾は思わず目を逸らした。

「と――当然だろ!?見損なうなよな……」
「うん……あの、それでね……」

 また何か言い辛そうに口ごもる彩夏に、流石に真吾も少しイラついてきた。

「何なんだよ、まだ何かあるのか!?」
「ご……ごめん。怒ってるの?」

 別に怒っていた訳ではなく、動揺を見抜かれたくない為のテレ隠しだったのだが、彩夏には不機嫌に見えていたようだ。彩夏は少し、しょんぼりしていた。

「違う!そうじゃないって……悪かったよ、怒ってなんかいないから……」
「じゃあ、何でイラついてるのよ……」

 と彩夏に問われて、真吾は絶句した。
 襲わないように我慢してますなんて言える訳ない。
 真吾はイラつく心を宥めて、彩夏の話をにこやかに促す。いつも流麗な彼女の話し方が、何だかぎこちない。言葉を躊躇するように、しどろもどろだった。
 遷ろう揺れた瞳も、恥らえば恥らうほど染まる頬も、正直に言えば直視し辛い。彼女にそんなつもりが全くないのは承知しているが、男と二人きりだという事を少しは意識して貰いたい。

「私が迫ったのって……どこまで酷かったのかなって……」

 待て待て待て!何を聞こうとしているんだ彩夏は!?
 逃げ出したい雰囲気と襲いたい衝動の狭間で、真吾は煩悶する。
 最も語りたくなかった部分まで、事細かに説明する羽目にまでなったのに……何なんだよ!?

「それ……先生の所で、全て話したと思うんだけど……」
「そうなんだけど……どう滝川くんに、迫ったのかなぁって……」

 マジで待てや――!?
 二人きりの密室で危険な質問をするなんて、何を考えてるのか。男の心情も考えてくれよ……真吾は、切なくなりそうな下半身を、どう宥めるべきか苦悩に喘いだ。

「どうして穿り返すような事を聞くんだよ……」
「気になるんだもの!どんな事を言って迫ったのか……だって、それを滝川くんは知ってるんだもの。気にしちゃうよ……」

 要するに、自分の知らない自分の(お強請り)姿を、何かしらで重ねて見られてハアハアされないか気になると……そういう事か!?
 彩夏はたまにドキリとするような仕草を見せつけるし「絶対に重ねたりしないよ」などという、無責任な台詞は真吾も言えない。

「そんなに気になるの……なら、教えてやるよ……」

 彩夏の身体を引き寄せて、真吾は耳元で囁いた。
 耳に熱い吐息を掛けられた彩夏は、驚いた顔で身を少し固くする。

「後で話すって言ったけど――もう遅い。僕をその気にさせるから……」
「え……ええ?あの……滝川くん?」
「渡辺さんが悪いんだよ?男とこういう場所で二人きりになるっていう事が、どんな事なのか……もう少し良く考えなよ」

 慌てる彩夏を無視して、真吾は彩夏の身体に覆い被さった。

 ◇

「どう?自分がしたお強請りで、逆に迫られる気持ちは」

 彩夏があの時したお強請りを、真吾は配役を入れ替えて彩夏自身に実演して聞かせた。要するに真吾があの時の彩夏を、あの時の真吾を彩夏に代役をさせて、彩夏自身の身体で実演して見せた。
 彩夏の困惑した顔は、少し泣きそうだった。

「滝川くん、意地悪だよ……」
「僕の気も知らないで、こんな事を言わせようとする方が意地悪じゃない?」

 そう言うと、彩夏は「わからないよ……」と首を振った。

「僕が何度、押し倒したいのを我慢してたかわかるか?君は……自分の魅力が、わかってないんだな」

 男心に無頓着なだけでなく、男に欲望を向けられた経験も、恋心を向けられた事もないのだ。自分の事を棚に上げて、意外そうに驚く彩夏の表情に、真吾はそれを実感させられた。

「私が……魅力的だって言うの?」
「可愛いよ、凄く。こんな場所で長い時間二人きりになって、何も意識せずにいられる訳がないだろ。僕に一度襲われてるのに、迂闊すぎるよ。君は……」

 可愛いと……言われた事がないのか、彩夏は。
 驚き恥らう表情に、真吾はそう感じた。
 本当はこんなに可愛い|女《ひと》なのに、表の仮面が分厚すぎて認識されないのだ。確かに眼鏡を掛けたクールな委員長では、男は寄り付かない。
 ショーツの上から、ズボンにまだしまわれたままのペニスを押し当てた。

「当たってるよね、渡辺さん。僕は、こうならないように我慢してんだぜ?」

 固く勃起した膨張が、グリグリとマン筋を擦る。
 彩夏は抵抗するように、身体の下で身じろいだ。

「や……ん!やだ滝川くん……!」
「やだじゃないだろ!?誘うような真似をして、僕を男だと認識できてなかった渡辺さんが悪い……」

 薄っすらとしたショーツのシミに、じわりと新たなシミが広がる――彩夏が興奮を感じてると知覚した瞬間、真吾の劣情は一気に燃え上がってしまった。彩夏の意思がどうであれ、こうなってしまうと男子高校生の劣情は歯止めが利かない。

「マンコ濡れてるみたいだけど……渡辺さんもエッチしたいんじゃない?」
「だめ……滝川くん、やだ……っ」

 ショーツ越しの秘部にペニスを押しつけながら、真吾の手が強引に腰を引き寄せる。やだと拒む割には彩夏に必死さはあまり感じられない――本人が気づいてないだけで、彩夏も心の底では若しかしたら……。

「ね、しようよ。ヤりたいんだよ、渡辺さんと……なあ、良いだろ……?」

 真吾は拒む彩夏に、滾った欲望を擦りつけてセックスを強請った。
 ――が、その時だった。

「……嘘だろ……」

 記憶に新しい感覚だった。
 クラクラ眩暈がしたかと思うと、精神が内に強く引っ張られた。彩夏と一緒にいる時に、この状況でまたとは――軽くデジャヴ。
 ズルズルと引き込まれて、抜け出せない。あの時と違うのは、深淵に飲まれていくような意識。
 薄れていく意識の中で、真吾は思った。
 彩夏といると、アレに出会いやすいのかもな……と。
 真吾の意識は深淵に包まれ、自分の内にすら浮かび上がって来る事は無かった。

小説家になろう・ノクターンノベルズでも連載中です◇










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2018/07/31 00:00 | 竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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