2ntブログ

◆◇◇◆◇◇◆

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--/-- --:-- | スポンサー広告  

竜を継ぐ者(23)彼女の前髪が長い理由



「――ご……ごご、ごめんなさい!」

 うっかり真吾の肩に頭がもたれ、泡をくったように謝る美奈。跳ねるように急いで起きる姿は、何と言うかちょっと滑稽で愛らしくすらある。
 頭を首に座らせて置くのも、そろそろ困難そうに見えた。
 大丈夫なんだろうか……隣りの美奈を気にかけると、あまり平気には見えない。重そうに項垂れる頭を、フラフラと揺らしていた。
 見てられないな……。
 美奈の頭に手を添えると、真吾は首の上に戻ろうとする頭を自分の肩にボスッと押しつけた。

「た……滝川くん!?あ、あああ、あの……っ」

 美奈の顔が茹蛸のように真っ赤に染まる。
 真吾もメチャメチャ恥ずかしい――が、場合が場合だ。

「まだ下車駅まで15分はあるんだろ?無理しないで、そうしてたら?」

 流石にテレが凄まじく、美奈の顔が直視できない。
 なるべく平静は装っているが心臓はドキドキと煩いし、緊張はどうしたってしてしまう……彩夏に慣れただけであり、女の子に対して慣れた訳ではないのだ。
 少し前ならこんなリア充爆発しろみたいな事は、無かったよなぁ……自分に起こる事も有り得なかったし、自分からやる度胸も勿論なかった。
 堕児に関わってから、その辺りが加速度的に変わったと思う。
 それが良い事なのかどうか悩むところではあったが、取り合えず今は役得なのだと思おうと真吾は自分を納得させた。

「あの――誤解されたりとか……滝川くん困るんじゃ……」
「っぷ、誰に?」

 そんな心配をされる事があまりに意外で、真吾は噴き出してしまった。

「えっ……どうして笑うの?」
「いや、変な事を気にするんだなって……僕に彼女がいるでもないのに」

 そう言うと、美奈は困ったように俯いた。
 何だか彼女の頭上に、飛んでいく汗の幻が見えたような気がした。

「だって……あの……私なんて嫌じゃ……って……」
「別に嫌じゃないよ。それに――」

 どうやら美奈も我が家の姫君のように、先に相手を気遣うような子らしい。
 誤解を気にするなら、女の子の美奈の方なのに。

「どっちかって言うとそれ、僕の台詞だ」
「――そんな事ない……誤解されて困る相手もいないし……」
「なら良いけど。変な事に気を回さなくて良いよ――嫌でないならね」
「……うん」

 天使の輪くっきりの頭が、安らぎを求めるように元の場所へと納まりに向かう。
 どうやら、少なくとも嫌がられてはいないようだ。取り合えず一安心だな。嫌がられてたら、これから先が憂鬱になる。
 自分の身体にもたれて安らぐ美奈に、何の気なしに目を向けて真吾はドキッとしてしまった。
 胸元に頭が来ているのだ。
 肩を貸してるつもりなのに、抱いてる気分になるじゃないか……本当に小さいんだな。腕にスッポリ納まってしまう程に小さい美奈のか弱い雰囲気は、これぞ女の子という感じ。
 性格も大人しいし、まるで小動物みたいだ。
 それもウサギとか子猫とか、保護欲を掻き立てられそうな感じの小動物。
 守りたいと感じさせるような抱きしめたくなる可愛さは、女の子らしい女の子ってこういうのかなと勝手なイメージを懐かされてしまう。
 何せ、自分の周囲にいる女の子が千佳と美里だ。美奈のような雰囲気の女の子は周囲にはいないし、比べてしまうのも仕方ない。
 真吾は、急に意識し始めた。
 これからこの子を抱くのか……と。
 ぎこちない緊張は解けたものの、別の緊張が身体に降りてきてしまった。
 思わず美奈の身体に、目が向いてしまう。緩やかな起伏に細い腰……オイシソーな身体のラインを目にして、思わずゴクリと喉が唾液を飲み下す――。
 真吾は、ハッとした。
 いやいやいや、こんな場所で何を考えてるのか。人目のある場所で、女の子の身体を舐めるように見るなんてバカか、変態かよ!
 真吾は目を逸らそうと、車窓に目を向けた。
 なし崩しに犯してきた今までとは、何か違うものを真吾も感じていた。
 これからこの子を抱くと意識しながら、エッチする相手と行動を共にするという状況は、真吾もはじめてだ。意識するとヤバいくらいに緊張してくる。
 若しも彼女がいたら、こういうものなのかもしれない。
 例えばデートの日に、今日こそは彼女とエッチするんだと心に決めて、デートの最中にも凄まじい緊張を男は味わうのだろう。
 そんな緊張が心身を満たし、駆け巡っていく。
 抱くのかと意識すると、もうダメだった。マイジュニアが、意識と共に一気に膨張を始めてしまった。
 どうしよう……このままではマズい。彼女にバレたら、何と思われるか。
 諌めようと四苦八苦してると、美奈の頭が不意に動いた。

「た……滝川くん?」

 窺うように、美奈がこちらを僅かに見上げた。
 さらりと流れた前髪が、瞼の上を軽やかに滑っていく――その瞬間、隠れていた美奈の目が片方だけ露となった。
 その刹那、はじめて美奈と目が合あった。
 ドキリと心臓が大きく跳ねたと思うと、真吾は息を呑んだ。
 綺麗だ……。
 彼女の目の第一印象は本当にその一言に尽きた。他には何も浮かばない程に美しい、吸い込まれてしまいそうなくらいに綺麗な瞳。
 漆黒の黒曜石に星を散りばめたような彼女の瞳は見惚れる程に美しく、蛍のように儚なげに揺れる光は、神秘的な雰囲気が漂っていた。
 思わず言葉を失い、放心したように真吾は美奈の瞳を見つめた。
 美奈はボッと顔から火が噴いたかと思うと、真吾の視線から逃れるように俯いてしまった。
 残念……見えなくなった事を、真吾は心底残念に思った。
 もっと見つめていたかったな……などという気持ちが芽生えると、彼女の顔を見てみたいという欲求に駆られた。
 あんなに綺麗な目を美奈はどうして隠しているのだろうか。
 真吾はそれが不思議で、喉に引っかかった小骨みたいに気になった。

 ◆◇◆

 午後6時を30分は回ってしまった為に辺りは既に暗く、空には綺麗に星が瞬いていた。
 目の前に広がる森林は鬱蒼と暗く、歩道に等間隔で設置された街灯の光も頼りなげに思えた。昼は違うのだろうが、暗くなると本当に寥々とした雰囲気のこの森林公園。街の郊外だからなのかもしれないが、それでも人気があまりに少ない。
 美奈は、いつも寂々寥々とした道を帰宅しているのだろうか。

「はあ、はあ――流石に……疲れた……」

 そこそこ大きな池に、張り出すように設置された休憩用の東屋。東屋にあるベンチ――15人近く座れそうな座卓のような大きさ――にドサッと腰掛けると、真吾はそのまま寝転んでしまった。
 結構な距離を歩いて来たので、もうクタクタだった。
 公園に差し掛かったところで美奈が倒れて、美奈はそのまま気を失ってしまった。その美奈を抱いて、真吾は東屋まで連れて来た。
 美奈の家は知らないし、このまま放置もできない――それ以上に、真吾は美奈を堕児憑きから救わなくてはならない。例え知っていたとしても、家には連れて帰れなかった。
 小説のヒーローのように、何か大きな後ろ盾でもあれば違うのだろう。単独でコソコソとする必要も、無いのかもしれない。
 だが、真吾にはそんなものは無い。後ろ盾なんてものも無ければ、代わってくれる人もいない……。
 この選択は、仕方のない事だった。
 美奈が寝ているその横に、万歳状態で真吾は身を投げ出した。
 屋根の合間から夜空が見える。冬の足音が聞こえる11月の空気は、星が鮮明で綺麗だった。夜空を見上げた事など、そういえば無かった。たまにはこういうのも、悪くない。
 冷たさを帯びたそよ風に汗ばんだ頬を撫でられ、真吾は目を閉じた。
 静閑な虫の声、小さな漣のような池の水面の音……静かだな、人の声もしない。
 まるで別世界に迷い込んでしまったようだった。
 静かな空気は嫌いじゃない。自分自身がそうだし、落ち着く……。

「――って、こんな事してる場合じゃない」

 真吾はハッと起き上がると、隣りに横たわる美奈の様子を窺った。
 倒れた時よりも気息奄々で、悪化してるように見える。
 赤々と熱を帯びた頬に浮かんだ汗は、筋を作し緩やかな肌を滑っていく。美奈の意識は今も、戻ってはいないようだった。

「大崎さん……」

 彼女の名前を呼びながら、玉のような汗が光る肌に張り付いた前髪を指で梳いてやった。
 露となった美奈の素顔は、まるで目覚めを待つ人形のように綺麗だった。美人と言うには雰囲気が少し違う。どちらかと言えば可愛いに近いが、ぴったりという表現でもない。
 趣のある美しさは、可憐という言葉が一番しっくりくるなと真吾は思った。

「これは――傷か……?」

 鼻の上の額の部分――そこに3センチ程度の切り傷のような細い傷跡。不自然な程に長い前髪のは傷を隠す為のものだと、真吾は思い知った。
 顔の傷を気にかけない女性などいない。
 傷を誰にも見られたくないが為に、綺麗な顔を異様な風体で隠す悲しい乙女心――それを思うと、真吾は言いようもない切ない気分に囚われた。
 人目を引く傷でもないのだから、気にせず顔を出せばいいのに……と、思ってしまうのは真吾が男だからだ。
 胸の奥が痞えたような、塞いだ気分は何なのだろう。これから美奈を襲おうというのに、何故こんな気持ちを懐くのか。
 彼女の髪を梳いた指を、そのまま顔のラインに沿って、ツツ――と這わせると、ピクリという反応を返す美奈。
 意識がなくても感じるものなのか……?
 頬まで下ろしてきた指を、顎から首筋にかけて這わしていく。
 美奈はピクリとしながら――、

「あっ……あんっ」

 唇から艶のある声を零した。
 話した時の消え入りそうな声とは全く違う、実際の彼女の声――美奈の悦楽の声は、まるで夜に漂う金木犀の芳香のようだった。可愛く可憐で……脳を痺れさせるような、蠱惑的な甘い音色。
 気がついたらペニスはガチガチに勃起し、ズボンの中で強く反り返っていた。
 この程度の反応で、こんなになってしまうなんて。驚くほど過敏なマイジュニアに、真吾は少し恥ずかしい気分になった。
 違う……そうじゃないと、真吾は気づいた。
 電車の中でも美奈を意識し、既に勃起してた。
 美奈の素の魅力に、強い劣情を感じていたではないか……。

 サワサワサワ……。

 木々がそよ風に撫でられて、葉ずれの音を奏でる。
 星が降るように輝く夜空の下――眼下で力なく横たわるクラスメイト。今日以外に話した事も殆どない彼女の細い身体を、ボーっと真吾は眺めた。
 大きく上下を繰り返す、肌蹴た胸のなだらかな脹らみ。薄白い街灯の灯りに浮かび上がる、白さが艶めかしい細い太腿。文化部らしく生白い肌には、発情による発汗が玉となり弾けるように浮かび上がって――真吾の目に嫌にエロティックに映る。
 薄明かりに浮き出た彼女の肢体を、様態を気遣う目から――いつしか舐め回すような、いやらしい眼差しで真吾は眺めていた。
 本当は、意識を戻してからと考えていた。
 美奈に意識がなければ口説けないし、自我の有無についても気にはなった。
 しかし芽生えた劣情は、心を無視して加速度的にどんどん脹らむ。
 意識のない彼女を犯して本当に良いのか、罪悪感が抉るように心を苛む。今更それを躊躇した所で、堕児が寄生している以上は犯さなくてはならない。意識を取り戻した美奈が拒めば、どとの詰まり結果は同じ――襲うしかないのだから。
 彼女を抱きたいと思う気持ちは、自分自身にもどうにもならない。
 真吾は躊躇いに震える指先を、美奈のワイシャツに掛けた。

「犯しちゃうけど、ごめんね。助ける為だし……不可抗力、だよね?」

 ボタンを外す毎に露となっていく、美奈の白い胸元――肌蹴けさせると、薄いグリーンの可愛いブラジャーが完全に顔を出した。
 ふわっとした控えめな脹らみは、美里よりも小ぶりに見えた。
 下着を着衣したままの双丘を手のひらで丁寧に包み込むと、手のひらに収まる可憐な脹らみを、脇から寄せるようにギュッと掴む。
 手のひらにすっぽりと収まるサイズの美奈のおっぱいは、確かに大きいとは言えない。だが外見からわかる大きさから思えば、想像以上のものだと真吾は思った。
 熱を帯びた双丘を揉み上げながら、天地創造の如く隆起させた谷間に口づけると、柔らかくふんわりとした幸せな肉感が真吾の唇をやんわりと包み込む――。
 押さえが、利かなくなった。
 もち肌の美奈の肌は心地良く、ふわっとした質感は小ぶりでも十分に満足できる。その柔らかい脹らみにチュッチュッと舌と唇でキスを施しながら、堪らない感触に痺れるように酔いしれた。肌理の細かい美しい肌は飽きる事なく、何時間でも口づけられるような至高の肉感だった。
 美奈の素肌に、魅了される程の感動を真吾は覚えた。

■ |大崎美奈《おおさきみな》
 真吾のクラスメイト。
 額の傷を気にして、長い前髪で目元下まで隠してる、物静かで引っ込み思案な女の子。凄く小柄で、折れそうな感じに痩せ型。
 美術部に所属しており、休み時間は絵を書いて過ごすなど絵を描くのが大好き。いつもスケッチブックを持ち歩いてます。
 そのスケッチブックは恥ずかしい時に顔を隠したり、壁の役割も果たす(笑)
 リアルのモデルは特にいないのですが、イメージが近いなぁと思えるのはアニメ東●喰種:reの鈴●什造の女装した時……が一番しっくりくるイメージです。
 とびきりの美少女という訳では無いし、美人でも無いけど、綺麗……そんな絶妙な雰囲気の女の子です。
 私もイメージがなかなか掴めなくて(脳内にはあるんだけど)、何回も描き直しました。それでも上手く表現できなくて、時間も無いので諦めました(笑)
 目の雰囲気だけに気を使って描き上げましたが、未だに美奈のイメージイラストは未完成です。まぁ、こんな雰囲気って事で……。
 身長は150センチ。スリーサイズはB83 W54 H84。
mina3.png

小説家になろう・ノクターンノベルズでも連載中です◇










◆◇ 関連リンク ◇◆

竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)第一話へ
ヒミツのカンケイ第一話へ
『 M 』第一話へ
お兄ちゃんと私 第一話へ









2018/08/03 00:00 | 竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

竜を継ぐ者(22)無口なクラスメイトの女の子との急接近



 駅から離れた場所に建てられたこの学園は、丘の上に建てられている所為もあって何とも長閑な雰囲気の場所にある。
 徒歩で30分は歩く通学路には、丘だけに傾斜も勿論待っている。
 真吾が利便の良くないこの学園を選んだ理由は、聞かずもがな――中学時代の同級生と一緒になりたくないから――である。
 理沙の所を出ると、午後5時を30分ほど過ぎていた。
 これから30分の距離を歩くのかと思うと、少し憂鬱だ。

「また今日もアニメ時間に間に合わないな。あーあ……」

 真吾は小声で独りごちた。
 夢の内容に美里との事を添付させ、理沙に話して聞かせてきた。
 理沙は現実を見るべき学者畑に寄った人間だが、真吾の胡乱な話を躊躇いもなく信用してくれた。恐らくその背景には、堕児の解剖結果も絡んでいるのだ。
 それが真吾の語る内容を裏付け、理沙の信用へと繋げたのかもしれなかった。
 堕児の内臓器官からは、血液以外に3種の液体が採取された。
 食道から直結した器官――胃と思しき器官からは精液が採取されたが、恐らく自分のものだ。
 精液が堕児の糧だという、夢の内容がまた一つ現実世界で実証された。
 尾の内部には、管状の器官が通っている。尾の先は注射針のようになっており、そこから排出できる仕組みになっているようだ。
 堕児の死骸の外見からは、注射針など目視できなかった。恐らく猫の爪のように必要な時にだけ、内から出せる仕組みになっているのではと理沙は推察した。
 尾の管と繋がっている内蔵器官から発見された液は、理沙が気にかけていた催淫効果を促すらしい液体だった。
 簡単なマウス実験を行った結果、雌だけに興奮効果が発揮された。
 詳しい成分だとか、更に細かい実験の結果には日が必要らしいが、検査結果を待たずして得られた実験結果が一つあったらしい。
 液には睡眠を促す効果もある事が、偶然発見できた。
 マウスの小さな身体には、どうやら効き目が強すぎたようなのだ。催淫液を注射した雌は、興奮状態に陥った後、深い睡眠状態となった。
 脳波形をそのうち調べてみたいな……と、理沙は呟いた。
 無茶苦茶な、学校に機材を持ち込むつもりか。それに協力してくれる被験者がいないと、無理なのでは……。
 ただでさえ救助の方法が疾しい真吾としては、無闇に人を巻き込みたくないのが本音だ。理沙が協力してくれるのは有り難いが、妙な実験に生徒を巻き込まなければいいけど……と、真吾は不安になった。
 安心はできないと思う。何せ、澤井先生だからな……。
 3つ目の液は検査の結果が着てからでないと、何であるかも判明しないようだ。
 マウスに注入しても変化は見られず、餌に混ぜて与えたりもしたらしいが――何も変化は起きなかったようだ。
 そして堕児にメスを入れて次の日――今日だが、奇怪な事が起きた。
 解剖した堕児の遺骸が、溶けて赤黒い液体に変化してしまったのだ。採取した液体の方は特に変化は起こらなかったが、切り刻まれた遺骸の方は水分へと変貌を遂げた。
 夢の内容の通りの正体なのであれば、元から実体などあって無いようなものだ。元々からこの世のものではない……何が起こっても、特に不思議はない。

「だいぶ遅くなっちゃったな……」

 駅に着くと、既に6時を回っていた。
 一年以上も通っている学校ではあるが、矢張りこの距離は疲れる。運動不足の解消には良いが、この上に運動部なんて良くやるなぁと真吾は思う。
 駅構内は帰宅のピーク一歩手前の時間の為か、やや混雑していた。その殆どは会社帰りの社会人だが、大学生やうちの学園の生徒の姿もチラホラ見える。
 階段に差し掛かると、目の前に美しく長い黒髪が視界に映った。
 3段ほど上を歩くその黒髪は記憶に新しい。

「――危ない!」

 学校の制服に身を包んだ少女の背中が、長い黒髪を靡かせて真っ直ぐ真吾の方へと落ちて来る。胸にすっぽりと収まるくらいに華奢な体躯を、真吾は当然のように抱き止めた。
 抱き止めた後で、ホッとするように真吾は息を吐いた。
 後先を考えずに思わず抱き止めたけど、後ろに倒れなくて良かったなと。彼女が軽くて助かった。体勢が僅かにグラついたが倒れる事はなかった。
 抱き止めた瞬間に、手が少女の身体の下腹部に偶然に当たる。
 フワリと黒い靄が、視界に映った。
 この子……堕児に憑かれてるのか!?
 その手をすぐに引っ込めた。靄の存在は自分と、犯す相手にだけ見えれば良い。無関係な人間にまで見られたら、無用な騒ぎになってしまう。
 まさかこんな所で……戸惑いを少なからず感じたが、真吾はすぐに平静を装うと、腕の中の少女に視線を移した。
 腕の中の少女が、向けられた顔に気づいて驚きを露にする。彼女の顔に、恥ずかしさ以外で理解できる感情を見たのは、はじめてだなと真吾は思った。
 少女は焦ったように腕の中で慌て、そして今にも顔から湯気が立ちそうなほど、見る見るうちに頬が染まっていく。
 腕の中にいたのは、恥ずかしがる仕草が可愛いクラスメイトの女の子。

「大崎さん大丈夫?」

 今も慌てている胸の中の大崎美奈に、真吾は微笑みかけた。
 彼女の表情はあの前髪で良くわからないが、焦っているのは見ればわかる。

「あ――あり……ありがと」
「立てる?」

 頷く美奈を、真吾は地面にそっと降ろした――が、足が着いた途端に美奈の身体がよろっと崩れかけてしまう。

「――おっと……」

 真吾に抱き支えられて、美奈は再び真吾の腕の中に逆戻りとなった。

「ご……ごめんなさ――」

 焦った美奈は、急いで離れようとしているのかジタバタともがく。しかし矢張りふらつくのか、腕の中でよろめきかけた。
 美奈の様子をじっくり見ると、息も荒いし発汗も催している。真吾の見立てでは、もうそろそろ立っているのも辛くなる頃合の一歩手前というところだ。

「何かフラフラしてるね。発汗もあるし、体調が悪そうだよ?」
「だっ……大丈……夫」
「全然大丈夫じゃないじゃん。まったく……家はどこ?」

 言葉に詰まったように戸惑うと、美奈は俯いてしまった。
 本当に彼女が相手だと話が進まないな……昨日の朝に抱いた懸念の通りだと、真吾は溜息をついた。

「僕が家まで送るよ。家はどこなの?」
「そ――そんな……悪いし……」
「そんな状態の大崎さんを、放って帰れる訳がないだろ?」

 と言うと、フッと一瞬顔を上げる美奈。
 しかしすぐに再び恥ずかしそうに俯く――いったい何なんだ。

「だって……迷惑だもの……」
「別に……全然迷惑じゃないよ」

 見つめる真吾を美奈は、刹那の間ボーっと見つめ――また俯いてしまった。本当に何なんだよ。
 美奈は友人ともこんな感じなのか?
 少し強引に進めないと、気づいたら30分経ってました――なんて事にもなりかねないのでは……。

「悪いとか迷惑とか考えなくていいからさ――僕に、君を送らせてくれない?」

 僅かにこちらを見上げて、覗き込むように見ている美奈。
 心を隠すような彼女の長い前髪が、表情を覆い隠してイマイチ読み取れない。だが迷惑に感じていなさそうな隠微な空気は、そこはかとなく真吾にも汲み取れた。
 やれやれと心の中で真吾はボヤいた。感情の起伏どころか、表情からも解読できない女の子との会話は難解だな……と。

「……どうして?何でそんなに優しく……」
「どうしてって……当たり前だと思うんだけど。こんな状態で遭遇したクラスメイトを、放って帰れる方がどうかしてる」

 彼女の帰りの道中を心配する気持ちは、建前ではない。事情云々が無かったとしても、放っては置かなかったと思う。
 真吾は元から関わってしまった事を放って置けない性質だが、今回はそれ以上に気にするべき問題――堕児の存在がある。
 美奈が寄生されている事実を知った以上は、放置できないという真吾の事情。
 送り狼みたいで気が咎めるが、美奈の状態はもう予断を許さない状況にある。どこでどうするかが完全にノープランだが、途中で考えるしかない。
 美奈は僅かに唇を綻ばせた。

「……うん――そうだね。滝川くんて、そういう人だよね……」

 気づかない程に薄っすらとした微笑みが零した呟きは、どことなく過去に思いを馳せるような懐かしさを響かせていた。
 だが美奈の声は、帰宅で賑わう駅の雑踏に紛れて真吾には聞こえない。

「ん――何か言った?」

 真吾はニコッと、美奈に微笑みかけた。
 スケッチブックを口に当てて美奈は、首をフルフルと振る。
 その様子が不思議で、真吾は小首を少し傾げた。
 何か言ってたと思うのにな……真吾の心には彼女の、柔らかい微笑みの謎だけが残された。
 
「そろそろ立ってるのも苦痛だろ?」
「で……でも……」
「いーから気にしない!行こ?」

 美奈の肩を抱き寄せてやると、腕の中で美奈の身体がピョンと僅かに跳ねた。美奈の思惟を読む事はできないが、このリアクションは理解し易い。
 擬音にすれば恐らくドキッだろうか……?
 人目のある場所での密着の心苦しさに斟酌すると、真吾は少し強引に彼女の荷物を受け取る。
 真吾は美奈に向けてニコリと口角を上げた。

「僕にくっつかれるのは嫌だろうけど……送るまでの間だからさ」

 美奈はフルフルと首を振った。必死さを漂わせる慌しい振盪に、首は平気なのかと変な心配をする。
 嫌ではない……そう思って良いのかな。これからする事を思えば、そうであってくれると嬉しいんだけど……と、真吾は思った。
 小さな細い肩を支えながら、美奈を連れて真吾は電車に向かった。

小説家になろう・ノクターンノベルズでも連載中です◇










◆◇ 関連リンク ◇◆

竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)第一話へ
ヒミツのカンケイ第一話へ
『 M 』第一話へ
お兄ちゃんと私 第一話へ









2018/08/02 00:00 | 竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

竜を継ぐ者(21)彩夏の気持ち



「感じた事のある気に誘われてみれば……娘、またおまえだとは思わなかったぞ」

 独特の喋り方に聞き覚えがあるけど、誰だっけ……彩夏は記憶を手繰るように思いを巡らせた。
 漸く思い当たるとポカンと開いた口を閉じて、眦をキュッと釣り上げた。

「――あ!?あなた、私を強姦した……えーと……変態幽霊ね!?」
「なんじゃその、変態幽霊とは?けったいな|趣味《センス》じゃなぁ」

 彩夏は思った。
 あんたには言われたくないし、他に呼べる名前がないじゃないと。

「だったら名乗りなさいよ」
「ふん、良かろう。俺の名は、天て……」
「あまて……?何で黙るのよ、早く教えなさいよ。笑ってあげるから」
「ふん……矢張り良い。|真名志《まなし》と呼ぶが良いわ」
「何なのよ……」

 笑うと言ったから、真名志と名乗る仮定幽霊はヘソでも曲げたのだろうか。
 しかし彩夏は、まぁいいやと思った。こっちだって腸が煮え返るくらい怒ってるのだ。
 真吾の中からまた、こんな……これでは、もう疑う余地もない。似たようなシチュエーションで、同じような事を彼がした時に、また現れたとあっては……信じる意外ないではないか。

「まぁ良い、時が惜しいわ。おまえに言伝を頼みたい――」

 彩夏の怒りに対して、真名志はどこ吹く風だ。
 真吾に襲った非が無くても、この身体の持ち主が彼であっても、今現在動かしているのは真名志。これは正統な怒りの行動だから、きっと許してくれるわよね――彩夏は真名志の胸倉を掴むと、憤怒の形相でグラグラと揺すった。

「何が言伝よ!あの時の恨みは忘れてないんだから!」
「鬱陶しい女じゃなァ。おまえだって悦んどった癖に……」
「な――何ですって!?そんな訳ないでしょ、この変態!強姦魔!」

 ギリギリと胸倉を締めつける彩夏の手を、真名志は軽くあしらい一喝した。

「ったく……煩いわ娘!時が惜しいと申したであろう!!」

 腹に響くような怒号に彩夏はビクッと飛び跳ねると、悔しい事に思わず怒りも忘れてしまった。
 まるで神経を愛撫するようなソフトな話し声の真吾と、猛々しい山のような真名志の傲慢な話し方では、あまりに違い過ぎる。
 真吾が静なら、将に真名志は動――まるで対極だ。
 彩夏の脳裏に、さっき真吾から聞いた陰陽対極が浮かぶ。
 静と動というのも、確か陰と陽で別けられるもののはずだ。若しも二人を足して割ったら……割と、ちょうど良い性格になるんじゃないだろうか。

「真吾に伝えろ――第二の覚醒は失敗し、咎に入ったと。先ず以て|魂宮神社《たまみやじんじゃ》へ出向き、青竜の刻印と会え」

 どうでも良い事考えちゃったな……彩夏は、不承不承ながらも頭の中で内容を反芻する。
 埼玉県、魂宮神社……。
 何で、こんな奴の言う事を素直に聞いてるのかしら。そうしてしまう生真面目な自分が嫌だが、伝言らしいから仕方ない。

「俺は咎の為に、真吾と交信が絶たれている。現ずるのも、おまえの気を手繰ってやっとじゃ……今は奴を導いてやる事もできんから、疾く青竜の刻印に必ず会うよう伝えよ」

 思いながらも、頷いてしまう自分が情けない。
 真名志は安堵したような表情を浮かべると、彩夏を見てニッと笑った。
 その笑顔に彩夏は、嫌な予感にギクリとする。

「なかなか色気のある事を、しておったようだな。艶めかしい体勢ではないか」

 股座に押し当てられた膨張に真名志はグッと、力を込めた。
 いや、ちょっと待って!
 彩夏は、真吾の身体を押し返そうと焦った。

「――ちょ、ちょっと、またその手には……!」
「承知しておるさ。時間が無いと申したであろ、残念だが何もせぬさ」

 あっさりと意外にも引いた真名志に、彩夏は警戒を解こうとしない。
 しかし真名志は本当に何もしてくる様子はなく、彩夏は拍子抜けしたようにポカンと真名志を見つめた。

「俺は交信できるようになるまで暫し眠る。娘、後は頼んだぞ――」

 真名志はまたニッと笑うと、目を閉じてしまった。

 ◇

 糸が切れたマリオネットのように、彩夏の身体にパタリと真吾の身体が倒れ込む。全体重が彩夏に重く、圧し掛かってきた。

「まったく……早く目を覚ましなさいよ。重たいじゃない……」

 何度か身体を揺すってはみたが、真吾が起きる気配はまるで無かった。
 それにしても、顔が近い。
 男子の顔を、こんなに間近に見れるチャンスなど、そうは無い。彩夏は思わず、まじまじと見つめてしまった。

「男の子も意外と睫が長いのね。それにしても無邪気な寝顔だこと」

 起きていないのを良い事に、真吾の頬をツンと指で押してみる。
 さっき可愛い顔だと言ったら、怒られたのだ。
 キツい顔立ちの彩夏からすれば、可愛い顔が嫌だとは何とも贅沢な悩みだ。コンプレックスだと言っていたけど、何か過去に嫌な事でもあったのだろうか。
 クラスでの真吾は、いるのかいないのか下手したら気づかない程に大人しい男子だ。
 独りでいる事も多く、積極的に人と関わろうとしない。冷めた雰囲気をどこか漂わせている、ゲーム少年――というイメージを、彩夏は真吾に懐いていた。
 クラス委員長である彩夏は、クラスを纏める時の指針として、クラスメイトを大きく4つに別けている――傾注の不要な人物、傾注の可否が中間の人物、要注意の人物、無害な人物。
 傾注が不要な人物と無害な人物の違いは、同じようでいて違う。
 不要な人物というのは、クラスに溶け込んだ上で、問題を起す可能性が一切ない人物を指している。無害な人物も素行に関して心配は無いが、クラスで浮いてるなと感じる人物がここに位置づけられる。
 真吾に対する彩夏の評価は、無害な人物だった。
 クラスに全く友人がいないという訳でない真吾は、後回しにしたのだ。そんな矢先に、|あ《・》|の《・》|よ《・》|う《・》|な《・》|事《・》が起こった。真吾への認識を改めようと考えていたところで、また乗せられてしまうなんて。
 己の失態を思い出し、彩夏は煩悶とする。

「何でまた、あんな事になるのかしら……もう!」

 人畜無害そうな優しげな雰囲気に、油断したのかもしれない。
 真吾は何と言うか……イメージと中身にギャップがあり過ぎて、思わず警戒を忘れてしまう。草食系男子かと思ったのに、詐欺られた気分だ。普段は大人しい真吾に、あんな強引な一面があるなんて……。

「ちょっと……何ドキドキしてんの私、バカじゃない!?」

 母性欲を刺激されるような無邪気な寝顔に騙されてはいけない。無害そうに見えても、やっぱり男の子だ。
 はじめて可愛いと言われたからって、単純にも程がある。
 いくらはじめての相手だからと言って、強引に好きにした相手を意識するとは、どうかしてる。彩夏は、妙にドキドキしている自分に苛立ち、苦悩した。
 だが彩夏が真吾に異性を意識するには、それで十分だった。
 強引かと思えば優しかったり、ともすれば意地悪なのに正直。本当は思いやりに溢れた、不思議な人――協力する気になったのは、放って置けなかったから。
 でも、今は少し違う。真吾が信じられる人だと、感じたからだった。

「人の上で無邪気に寝てくれるわね、まったく……」

 少し開かれた唇を押してみると、ぷにゅっという感触が伝わってきた。
 案外プルッとしてるんだな、男の子の唇も……。

「何をやってんのよ。本当にバカじゃない……」

 息を感じられる距離に、心音が高まる。彩夏は唇を窄めると、思わず近づけていた。
 鼓動が、だんだんと早くなっていく。
 心では、何をバカな事をしてるんだろうと思う。こういうのを、寝込みを襲うというのではないのか。
 だがそう思う一方で、何故か引きこまれている自分もいるのだ。
 彼の息を意識すると、何かが高まるような不思議な気持ち。唇を重ねてみれば何かがわかるのだろうか……。
 もう少しで重なりそうなその刹那――。
 真吾の瞼がゆっくりと開いた。

「――ぇ……!?」

 いきなり真吾の目が開いて、彩夏はギョッとした。
 釣られたのか、真吾の顔もギョッとする。
 互いに10秒ほど固まっただろうか、緊張が解けると真吾が口を開いた。

「あの……えっと、いったい何を……?」
「えっ?いえ……何って……な、何でもないわよ?」
「だって……顔、真っ赤だけど?」

 彩夏は熱く火照る頬を、隠すように押えた。
 その様子を見て真吾は、怪訝な顔で彩夏を見つめた。彩夏はその視線から逃げるように、ブイッと横を向いた。
 寝込みを襲ったなんて、言える訳ないじゃない!

「何でもないから!何でそんな顔すんのよ、何もないわよ!」
「だって怪しいし……」

 彩夏は焦った。
 このままでは問い詰めらて、吐かされる。何とか彼の気を引かないと……。

「え~っと、滝川くん……で、伝言があるのよ」
「伝言?何それ、この状況で誰から?」

 何とか彼の気を引けたようだ。
 彩夏はホッと息を吐くと、真吾に言った。

「私を襲った、あの幽霊よ……」

 ◇

 気を失っていた時分の、真名志とのやり取りを、彩夏から聞かされて驚いた。
 あの時の存在に名前があった事も驚き要素だが、驚くべき点は他にもある――刻印が、他にも存在してるという事実だ。だけど同じ能力では無いのかも。同じ力なら、自分にしか無いと言う必要が無いからだ。
 自分の持つ能力が、真吾は逃れ得ぬものなのではと思い知らされた気がしていた。何も聞かされてはいないが、しっかりと歴史に裏付けされた何かがある――そんな予感がするのだ。

「滝川くん、いい加減どいて欲しいんだけど」

 そう言われて、未だ彩夏に被さったままだった事に気づいた。

「あ――ごめん……重たかったよね」

 身を剥がすように起き上がると、ブスッとした顔がホッとする。

「ええ、凄く!滝川くんなかなか目を覚まさないから、とても重かったわ。冷えるし布団には、まあ……丁度良かったけど!」
「ひっでェ。気を失ってた僕に布団て……それはないんじゃない?」
「ぷっ……何なのその顔、子供みたいね」

 口を尖らせて文句を言うと、不意に噴出す彩夏。
 クールな面立ちが優しげに崩れて、目を細めて笑う彩夏の笑顔。釣られるように真吾も思わず微笑むと、彩夏の笑いが何故か哄笑してしまう――真吾も釣られて笑ってしまい、二人は顔を突き合わせて一頻り笑い合った。
 笑いが収まった頃、真吾は不意に窓を見た。
 カーテンから僅かに刺す斜陽は、ほんのりオレンジの色身を帯び始めていた。

「そろそろお開きにするか。先生の所に行く時間が無くなるしな」
「あ、もうこんな時間じゃない!」

 机から降りる彩夏の細い括れを、真吾は腕を回して抱き止めた。ドキリとしたような表情で彩夏は、こちらの方を仰ぎ見た。

「な……何してるのよ、滝川くん。帰るんでしょ……?」

 硬直したようなギクシャクした彩夏の態度は、何だか初心で可愛い。少しは警戒心を懐くようにはなったようだが、まだまだ甘い。
 真吾は、彩夏の心を掻き乱すように耳元で囁いた。

「真名志の所為で中断したけど――エッチするつもりでいたのに残念だなって」

 彩夏の顔が一瞬で赤く染まる。
 てっきり怒るかと思ったのに、意外な反応だ。こんな顔を見ると、悪戯心が起こっちゃうな……真吾は、彩夏の耳珠に微かに唇をつけながら囁いた。

「またあんな真似をさせるようなら――次は本気で抱くよ、彩夏?」

 彩夏は耳まで真っ赤にして、カチコチになってしまった。初心な恥じらいに身を固くする彩夏が可愛すぎて、マイジュニアの方も石化しそうだった。

「――なんてね」

 と言うと、彩夏の怒りは烈火の如く火を噴いた。

「何のつもりよ!冗談だったのね!?」
「さてね?僕は嘘だとも言ってないけど……」

 すっ呆けるような真吾に、彩夏は怒りを止めるが、一呼吸の後にハッとすると、気づいたように怒りを再開させた。

「もう!からかったの……ッ!?」
「わからいでかってね。それとも何か、期待した?」

 クスッと笑うと、悔しそうに顔を真っ赤にする彩夏。

「バカ!もう知らない!」

 と言い捨て、理沙の所へ行くのも忘れて、ドスドスと足を踏み鳴らしながら資料室を後にしてしまった。
 可愛すぎ……真吾は、暫くクスクスと笑いが収まらなかった。笑いすぎて腹筋が、ほんのり痛い。
 次は本当に抱けちゃうかも……真吾は、そこはかとない期待に胸を弾ませた。

「さて……僕も先生の所へ行くか」

 真吾は資料室を出ると、理沙のいるであろう理科準備室へ向かった。

小説家になろう・ノクターンノベルズでも連載中です◇










◆◇ 関連リンク ◇◆

竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)第一話へ
ヒミツのカンケイ第一話へ
『 M 』第一話へ
お兄ちゃんと私 第一話へ









2018/08/01 00:00 | 竜を継ぐ者~黄の刻印の章(世界はエッチと愛で救われる)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

««BACK  | BLOG TOP |