◆ お知らせ ◆
この小説は、ノクターンノベルズ様の方で先に掲載しました。
掲載新章がノクターンの方に追いついたので、1章を分割して掲載する事にしました。
若干、変な場所での区切りになる話もあるかと思いますが、ご了承ください。
ブログの方が、少しだけ掲載が早くなる程度の違いになるかと思います。
◆―――――――――――――――◆
「滝川くん……何でこんな……」
嗚咽に喉を詰まらせると、美奈は沈黙した。
彼女は「何でこんな事するの」と言いたかったのだろうか。
それとも「何でこんな事をしたの」と聞きたかったのか。
終える暇もなく泣き出されて、抜去する猶予も堕児を回収する間もなく――落涙する美奈を真吾は抱擁した。
美奈の肢体は、抱きしめたらバラバラになりそうなほど細かった。頼りない肩を抱きながら、胸に抱いた頭を気遣うように、そっと撫でる。
「……ごめん……」
拒む様子も全く見せず猫のように頬を胸に摺りつけてくる美奈は、どことなく甘えているようにすら見えた。
レイプした男の抱擁に、どうして応えてくれるのか……それを自分で言うのもどうかと思うが、まるで恋人にでも甘えるような美奈の姿に、真吾は煩悶する。
美奈の態度に苦悩していると、徐に美奈が口を開いた。
「私は――結城さんの代わり……?」
「…………えっ!?」
信じられない言葉を聞かされて、真吾は茫然と美奈を見つめた。
美奈はその視線を苦しげに受け止めながら、悲痛に喘いだ。
「だって私――滝川くんが、好き……。好き、なのに……やめてって言ったのに……こんなの、どう思えばいいのか……」
美奈は言い終わると、親の死に目にでも会ったように激しく啼泣した。
強烈な一撃を貰ったような衝撃に、身も心も硬直する。思いもよらない瞬間に、思いもよらない相手からの……思いがけない告白。
女の子から貰った人生はじめての告白は、酷く苦い味がした。
美奈の悩ましい態度の謎の一部は、突然の告白で解けた。
頭を撫でる手に、抱擁に、キスに……彼女が甘えるように応えてくれたのは、恋慕の気持ちを向けていたから。
「何故もっと早くに……せめて君を犯す前に、好きだと言ってくれれば――」
息が詰まる程に力強く抱きしめられたからか、美奈の嗚咽がびっくりしたかのようにピタリと止んだ。
「もっと君を優しく抱いてあげられた……言ってくれなかった事を、君の所為だと責めるのは間違ってる。それは理解してるよ。でも言って欲しかった……そうすれば、僕は君をレイプしないで済んだのに……!」
美奈の小さな頭を抱きしめる肩が、細く震える。
肩先に、紅葉のような美奈の手が触れた。
「たき……がわ、くん。泣いてる……の?」
覗き込む美奈の濡れた双眸が、自分を犯したクラスメイトの涙を見て当惑していた。
「ご……ごめん、僕に泣く資格なんか無いのに。自分のバカさ加減が、あまりに情けなくてさ……」
美奈は戸惑うように目を伏せると、首を横に振った。
彼女も何と言えば良いのか、わからないのだろう。思いを打ち明けなかった事を責めて、泣かれて……しかも、レイプしたのは当人なのだから、心が追いつかないのも当然だった。
「でも……この誤解だけは解かせて。どうして結城さんを引き合いに出したの?」
美奈は伏し目がちのまま、途切れ途切れ呟くように告白した。たどたどしい美奈の言葉は、聞きながら咀嚼できるだけの時間があったが、あまりに予想外の返答だった。
「滝川くん、結城さん好き……だよね?知ってたの。結城さん……好きなんだろうなって。代わりに犯されたのかなって……そうでなければ、私なんて――」
「僕が相手にするはずなんて無い――大崎さんは、そう言いたいの?」
真吾は、美奈の言葉を奪って続けた。
怒ったような冷ややかな響きに、美奈は酷く驚いたようだ。見開いた双眸が、泣きそうだった。
◇
小説家になろう・ノクターンノベルズでも連載中です◇
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2018/08/06 00:00 |
小説概要と目次
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